二個目の苺〜ビターチョコ〜-4
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「はい、ここにおくね」
折り畳み式の小さな丸テーブルの上に、マグカップを置いた
「ありがとう…あったかいね」
紺君は私に話すと言ってくれた
無理にこじ開ける必要はないけど、私も紺君のことをちゃんと知りたい
でも…私なんかに理解出来るのだろうか?受け止められるのだろうか?
「杏子さん」
「あ、はい」
「さっき、観覧車乗ったよね」
「うん」
「僕は五歳のときに乗って、それ以来乗ってなかったんだ
友達同士で来て、あまり乗るものじゃないからね
五歳のとき、僕は家族、親と一緒に来て…それが両親との最後の思い出になった」
私は自分の手をぎゅっと握った
「五歳って言っても意外と色んなこと覚えてるものでさ、両親が死んだときのことも、ちゃんと覚えてるんだ」
紺君の唇が微かに震えている
「交通事故だった
僕はその日祖母の家にいて、二人の帰りを待ってた
二人はケーキとプレゼントを買う為に、僕を祖母に預けた…
…僕の六歳の誕生日だったんだ
大きなトラックだったから、二人共…
僕はよく分からなかった
祖母がずっと泣きながら拳をたたき付けていた
祖母は二人を失った悲しみからか、ほとんど何も食べなくなって、毎日泣いて、そのまましばらくして、後を追うように亡くなった
僕は周りの人がどんどんいなくなって、ただ混乱してた
僕が頑張れば、誰もいなくならないんじゃないか、なんてよく分からないことを考えもした
少しして、僕は数回しか会ったことのない伯母さんの家に引き取られることになった
そこには僕と同じ年の男の子、ジュン君がいた
僕は、とにかく頑張らなきゃと思って、何でも言われた通りにして、口答えはしなかった
特に勉強をした
小学校のテストではいつも満点をとれるように
ジュン君は違うクラスで、いつもサッカーとか野球とかスポーツをしてた
僕と彼は同じ私立中学に入った
僕はずっと勉強してばかりで、相変わらず成績は良かったけど、何かやりたいと思うようになって、ジュン君と同じサッカー部に入った
特に考えなかったんだ
知り合いがいたほうがいいかな、なんて思っただけで
僕はすぐに部活に夢中になって、一生懸命練習した
でも、半分くせだけど、勉強も続けた
試験で学年一位になった少し後に、僕は部活でレギュラーになれた
喜ぶ、というよりほっとした
こうやって頑張っているうちは、不幸なことが起きない気がしたから
でも、僕のそういう無神経な行動が、ジュン君を傷付けてたんだ