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夏の終わりに
【教師 官能小説】

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夏の終わりに Last-10

 翌日。

 グランドに構える私に向かって滑るような打球が飛んで来る。一瞬、身体を沈ませるとバネを弾くように横に飛んだ。
 土の上で身体を滑らせ、目いっぱいに伸ばしたグラブに打球が収まる。
 私は素早く身を起こし、ジャンプしてファーストに投げた。後方に流れそうになる身体を、前に屈んで相殺する。

「ナイスキャッチ!もういっちょっ!」

 今度は真正面へ来た。バウンドが高く弾む。逆回転の打球だ。
 私はガッチリとボールを掴んで送球する。

「オッケー!あがれ」

 柔らかな声がコーチから掛けられる。私は帽子を取って一礼するとグランドの隅に向かった。

 8月29日。明日から、生徒の登校は禁止となる。

「正吾、今日の動きはキレてたな」
「…自分でもびっくりしたよ。身体が反応したんだ」

 夏休み最後の部活を終え、私は着替えながら笑顔で応える。
 久しぶりに会う篠原とのことに、自然と笑みが漏れた。

「今日もコンビニ寄って行くか?」
「イヤ。この後、ちょっと用事があるんだ」

 太田の誘いを私は断り、部室を出て行った。

 大急ぎで準備室の前に立った。 私は入口をジッと眺めた。1枚の隔たりの前で様々な思いを巡らせ、躊躇い勝ちに扉を開けた。
 窮屈な通路を奥に進むと、いつもの服装で篠原が座ってた。

「…先生…勝手なことして…すいませんでした」

 私は頭を下げた後、ゆっくりと篠原を見た。彼女は目を真っ赤に腫らし、

「…もう、帰ってこないかと思っちゃった…」

 私の腕を掴み、俯いたまま涙声を漏らす篠原。

「いえ…ボクこそすいません。先生の作品がもうすぐ完成って時に…」
「…いいの!とにかく、締め切りまでもうすぐだから宜しくね」

 篠原は涙を拭うと、慌ててキャンバスにむかって準備を始めた。私は、そばで彼女を眺めながら着ている服を脱ぎ捨てた。

「じゃあ…始めましょう」

 気持ちを切り替えた篠原の目は、いつものように真剣味を帯びていた。



「エッ?明日もですか…」

 夕暮れ時。クルマで帰る途中、篠原の申し出に私は戸惑った。

「ええ…どうしても仕上げが上手くいかなくてね」

 彼女は、明日のモデルも私に依頼してきたのだ。

「…でも、学校は明日から立入禁止でしょ。大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ!いつものように裏の入口から来れば誰もいないから」
「だったらボクは良いですよ!」

 私は嬉しかった。またしばらく会えないと思ってた、彼女と再び会えるのだから。

「じゃ、いつもの時刻にね…」

 私を自宅前で降ろし、クルマは闇へと消えていった。


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