今夜、七星で Yuusuke’s Time <COUNT1>-8
樹里さんが来たのは八時少し前。
これからゲストのジャズバンドによる演奏が始まるって時だった。
「樹里さん。やっと来た! ご注文はキール・ロワイヤルですよね?」
樹里さんにわざとらしく微笑み、椿さんをからかう。
「樹里さんが来るとやっぱり嬉しい。今日も、最後までいるんですよね?」
わざと体を寄せ、含みを込めて囁く。
椿さんの表情が可笑しくてついつい拍車が掛かる。
もっとからかおうと思ったら、プツンと切れた椿さん。
席を立ち、レストルームへと行ってしまった。
「あらあら。……何からかってんの?」
「だって潔癖過ぎて面白いんだぜ?あの人」
「あたしより仲良くしてんのー?妬けるわねぇ」
余裕でくすくす笑う樹里さん。背中をポンッと押して「行けば?」なんて窘める。
メインステージに明かりが点り、客席の照明が暗くなる。
歓声と拍手。その隙間を縫ってレストルームへと向かう。
レストルームに独りきりの椿さんの背中を見て、少しやりすぎたかと苦笑した。
「どーしたの?椿さん」
「…ムカムカするんです」
「妊娠したの?」
「…違います! ユースケ君にムカムカしてるんです!樹里に失礼だと思わないんですか?」
………何て言うか、こいつ馬鹿じゃね?
「思わないですよ。だって、樹里さんだって割り切ってるもん」
「だからって!」
なんで怒ってんの?
俺と樹里さんの関係なんて上っ面しか知らない癖に、何被害者ぶってんの?
樹里さんの友達、って遠慮してたけど。
無性にへし折ってやりたくなった。
ぐいっと手を掴み、短く悲鳴をあげた椿を腰ごと引き寄せる。
目を見開き驚く椿をよそに、俺はその唇を奪った。
ふくよかな唇に舌を寄せ、綺麗な歯列をなぞって舌を絡ませる。
唾液だとか息継ぎだとか、もちろん嫌がるそぶりとか、すべて無視して咥内を味わった。
アルコールを摂取して高くなった体温を絡めた舌から感じる。
クチュクチュと唾液が鳴くたびに息苦しそうな声が漏れ、熱い吐息と混ざり合う。
舌を吸い、時には軽く歯を当て、そしてざらざらとした舌の表面で椿の舌を擽った。
「んぅ」
身をよじって快感に耐えるのか、火照ったその体に手を滑らせる。
ピッタリと張り付いたタイトスカート。その裾をたぐませながら尻をなぞる。
張りと適度な弾力を持ち合わせたそこは、期待しているのか蒸れて女の匂いを発していた。