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ある季節の物語
【SM 官能小説】

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ある季節の物語(春)-1

 美穂が振り向いた瞬間だった…。
 僕の掌が美穂の肩に触れた。そして片方の手が腰にあたりを抱き寄せる。
 美穂は僕の瞳を避けるように僕の胸元に視線を降ろす。彼女のあのときの体が僕に迫ってくる
ようだった。

 …キスしたい… 

僕の心の中から、もう一人の僕が囁きかける。そしてその言葉が僕の背中を押す。
 僕は美穂の体を強く抱き寄せる。僕の胸と彼女のどこか甘い匂いを持った体が重なると、僕は
その手で美穂の柔らかい髪をかき上げるように頬にふれた。

 彼女の中を何かが一瞬よぎったような気がした。
 美穂は脅えたように僕の顔を避けようとしたが、彼女の微かな透明の息をさえぎるように僕の
顔が彼女の上に重なる。

 そして僕の唇が美穂の懐かしい唇に触れた…



 …あ、美穂じゃないか…

 僕のマンションの近くで美穂とたまたま会ったのは、桜の花びらがもう散る頃だった。

 …まさか、あなたがこの近くに住んでいるなんて…

 僕と美穂が別れてから七年ぶりの再会だった。
 あのころのストレートの髪型とポッチャリした、どこか初々しい女高生のようなあどけない顔
の輪郭は変わってはいなかった。
 でも少し化粧が濃くなり、どこか若奥様風というか、あの頃の彼女とはどこか違う静かな落ち
着きをもっていた。

 …結婚したのか…
 …ええ…と、美穂は少しはにかんだような笑いを浮かべて言った。

 美穂は、確かもう三十二歳になっているはずだ。


 美穂の唇はあのときとは確かに違っていた。わずかな冷たさを持ちながらも、ほどよい女の潤
みを持っていた。いま、僕の唇は閉じられたまま、美穂の唇に重ねられている。僕はその美穂の
唇の皮膚から、彼女の体全体をしっかり感じていた…。


 あのとき見かけた美穂の夫の脂ぎった頬の肉が、ふと僕の脳裏をかすめた。ひとまわり以上も
歳が離れた醜い腹の突き出た太った男だった。

 …彼とは、見合い結婚なのよ…


 僕の唇が、美穂の桜色の唇の上をなぞるように左右に微かに動くと、美穂はあのときと同じよ
うに自然に唇を開いていく。そして彼女の下唇をわずかに挟むように僕の唇が這う。ふたりの唇
はどこまでも心地よい湿り気をもち始めていた。

 僕は、やさしく緩やかに美穂の口の中に舌を忍び込ませる。それに呼応するように彼女の舌が
僕の舌を迎えるのだった。

 
 目を閉じた美穂と僕の互いの舌が触れた。甘い果肉のような美穂の舌だった…。
 そしてふたりの舌がしだいに粘り気をましながら絡み合いを続けると、彼女の舌は喘ぐように
伸びきってくる。


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