ある季節の物語(春)-2
まるで男の性器を求めるように蠢くのだ。
…だめよ…だめっ…
美穂は、そうつぶやきながらも、逆らうことなく僕の腕に強く抱き寄せられていた。
彼女の体全体が僕の体に包み込まれる…。強く抱いた美穂のブラウスの下の乳房のぬくもりが
ふわりと伝わってくる。あのころの薄くふくらんだ胸は変わってはいなかった。でもきっとあの
ときとは違った芳醇な女の香りが、その乳首からきっと匂ってくるに違いない…。
僕の掌がどこまでも優しく美穂の髪を撫で、腰に触れた片方の掌がより強く彼女を引き寄せる。
…あなたは、あれからあの人と結婚したんだ…
…ああ、でも、あの女とはすぐ別れたよ…
僕はそっと唇を離し、彼女の耳もとで小さく囁く。
…そう…
美穂のどこか遠くを見つめる瞳が、あの頃と変わっていなかった。
僕は美穂の耳朶を軽く咬む…。彼女は首をすくめ、そのくすぐったい僕の歯の感触から逃れる
ように僕の顔に頬を寄せた。その白い喉の肌が、あの頃とは違う艶めかしい濃い色気を漂わせて
いる。僕は体を疼かせるようにその薄く繊細な唇を強く吸う。
美穂は僕の腕の中で小さく喘いだ。そんな美穂のしぐさに僕は彼女を愛しく抱きしめた。
そのときの美穂の体の躊躇は、あの頃の彼女とは確かに別のものだった。
もう人妻なのだ…
彼女は夫の眩惑にためらいながら僕の体に寄り添っているのかもしれない。
そしてお互いの唇が擦れ、舌と舌が縺れあうほどに絡み、唾液を啜り合う。
一瞬、美穂のあの頃とは違う陰部を想像する…きっと漆黒の成熟した淫毛に覆われ、厚みを
もったしっとりとした淫唇だ…。
その美穂の胸元に蕩けるような雪白い肌が覗いていた。僕は美穂の背中に掌を回す。
彼女の背中から臀部にかけて、衣服の上からそのしなやかな曲線を撫でる。痩せた華奢な体だ
が、形のいいお尻の肉があのころとは違って、熟れた女のような豊かな柔らかさをもっていた。
僕と美穂は縺れあうようにベッドに沈んでいった。
そのとき見た美穂の白く細い手首の痣…まるで手首を縄で縛った痕のような擦れた赤い痣だっ
たのだ…。
美穂と再会したあの夜から、僕は美穂の携帯に何度となく電話を入れた。
…もう一度、会いたい…
でも、美穂は電話の先で戸惑うように僕を避けていた。
…だめ…だめなのよ…もう、私には主人がいるの…
美穂が僕を避けようとすればするほど、僕の美穂への思いは募るばかりだった。日に日に僕の
美穂への愛しさが心の底から甦るように増していく…