最後の嘘をあなたに-2
ご臨終です。
医師の声と共に、私は崩れ落ちた。
「紗耶香ぁぁぁぁ。」
紗耶香のいなくなった病室は真っ白でガランとし、まるで元から何もなかったかのようだ。
紗耶香の温もりを少しでも感じようと枕元に手を伸ばす。
何か違和感を感じた。
枕をどけてみるとそこには【さやかの日記】と書かれたノートがあった。
11月15日
きゅうに入院することになっちゃった。
ちょっとこわいな。
でもお母さんがだいじょうぶって言ってたからだいじょうぶ!
早くおうちにかえりたいな。
11月27日
さいきんはお外にも出れなくて、つまんない。
体もどんどんしんどくなってきてる気がするよ。
でもお母さんがずっといっしょにいてくれるからうれしいな。
12月20日
なんだか分からないけど今日はいつもとちがう気分。
だから…今日はほんとのことを言います。
お母さん、実はわたし自分が助からないってしってたんだ。
先生とお母さんの話をこっそりきいちゃった。
ごめんね。
それから、今までわたしのためにお母さんにいっぱいうそつかせちゃったね。
ごめんね。
それから、びょうきのことしらないふりしてうそついてごめんね。
それから、今まであたしをいっぱい愛してくれてありがとう。
お母さんさんのことかんがえたら、【それから】がいっぱい出てきちゃうよ。
大好きだよ。
お母さん。
この日記を読み終えた私は周りのことなんか気にせず、一人病室で泣き続けた。
最後まで嘘をついていたのは、私ではなく
紗耶香だったのだ。