投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Stealth
【アクション その他小説】

Stealthの最初へ Stealth 37 Stealth 39 Stealthの最後へ

Stealth Last-6

「タケさん。私、給湯室の方やりますから」

 美奈は、そう言って廊下の真ん中辺りにある給湯室へと向かおうとする。

「ちょいとお待ち!」

 突然、広野が大きな声で彼女を止めた。

(…ヤバい…変なのがバレたんだ…)

 美奈は、恐る々後をむいた。

「な、何?タケさん」
「ゴミ収集の台車とゾウキン持ってかないと」

 広野は手ぶらで行こうとするのを止めたのだ。美奈は、慌てて廊下を戻り台車とゾウキンを取った。

「…どうしたんだい?先刻から。段取り忘れるなんて」
「す、すいません!ちょっと考え事してたんで」
「しっかりおしよ…」

 再び給湯室へ行くと、いつものように清掃を始める。広野はしばらく美奈の様子を見ていたが問題無いと分かり、

「あたしゃ、奥の事務所からやってるから」

 そう言って給湯室を後にした。

「フーッ…何とかごまかせた」

 安堵の息を大きく吐き、美奈は手袋を取った。
 そして、ポケットからカプセルを取り出すと、流しのディスポーザーを外して剥き出しになった管の中に落とした。

(…終わった…)

 頼まれ事を終え、美奈は再び安堵の息を吐いた。そして、広野の待つ奥へと小走りで向かった。



 朝。恭一がオフィスに向かうと、すでに佐倉達のクルマが停まっていた。

(…うっとおしいヤツだ)

 いつものようにクルマを停める恭一を見た佐倉は、慌ててドアを開けた。

「おまえ、そのナリ…何処に行くつもりだ?」

 近寄る佐倉。恭一の手には小さめの旅行カートが握られていた。

「寒くなってきたんで温かな所でもと思い立ちましてね。ちょっとした癒しにでもって」

 嬉しそうに答える恭一。だが、佐倉は、

「おまえが癒しだと!何よりアクションを好むおまえが?」

 そう言うと声をあげて笑いだした。

「…佐倉さん、結構失礼なんですね…」
「いや、すまん。しかし、おまえの口から“癒し”なんて言葉を聞くと、ブラック・ジョークこの上無いな」

 再び笑いだす佐倉。先ほどまでの嬉しげな表情は何処へやら、恭一はムッとした顔をした。

「で?今日は何です。先刻も言ったように、旅行に出ますから手短かに願いますよ」

 ようやく落ち着きを取り戻した佐倉は、いつもの真剣な眼差しを恭一に向けた。


Stealthの最初へ Stealth 37 Stealth 39 Stealthの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前