Stealth Last-16
エピローグ
播磨重工ビル爆破から、佐倉と宮内は精力的に調べまわった。
レスキュー隊のロボットを使って、崩れたビルの中を調べたが何も見つから無かった。
爆弾処理班の調査から、これ以上の崩壊は無いと分かると、鑑識や科学分析官と実況検分を行うが、爆破された地下部分は足跡の採取も不可能なほど破壊されていて、1階の警備室も、跡形も無いほど破壊されていた。
犯人は、用意周到に証拠となる場所も破壊したようだ。
その後の事情聴取から、当日現れた設備業者が犯人だと断定された。警備員やメンテナンス課の社員、美奈達、清掃婦も聴取され、彼女達は見たままを佐倉や宮内に伝えた。
しかし、そんな男は何処にもいなかった。当然だ。変装した五島なのだから。
後日、警察署に恭一が現れた。佐倉が任意で押収したルノー4を受け取りに来たのだ。
佐倉は恭一を見るなり歯噛みした。
「おまえが犯人なのは分かってるんだ!」
佐倉を見て恭一は笑みを浮かべる。
「令状持って来て下さい。待ってますよ」
ルノー4は警察署を後にした。
結局、ひと月におよぶ捜査の結果、犯人は30代で作業服姿の男、使われた爆薬はアメリカ製プラスチック爆弾、“通称C‐4”という事だけだった。
数日後。
播磨重工ビルからクルマで数分の距離にある播磨重工本社ビル。爆発事件から3日後から美奈や広野を含めたメンバーは、ここで働いていた。
今までとの勝手の違いに、ようやく慣れてきた美奈だった。
昼過ぎの退社時間、ビルを出たすぐにルノー4が停まっていた。
「き、恭一さん!」
美奈は思わず駆け出した。播磨重工ビルが爆破される前日に会ったきりだった。
「どうしてたんです!まったく連絡も取れないし!」
矢継ぎ早に質問を浴びる恭一。うんざりという表情を見せた。
「といあえず乗れ!話はそれからだ!」
「言われなくても乗りますよ!」
美奈は膨れっ面のまま助手席に乗り込み、勢い良くドアを閉めた。
「やれやれ…」
恭一は、小さくため息を吐いてクルマを発進させた。
帰り道、車中は美奈の独演会だった。爆破事件から、ひと月の間に自分に起こった災難を、次から次へと吐き出した。
恭一は、時折、相づちを打ったり質問を交えるだけで、自分の事は一切喋らなかった。