Stealth Last-15
恭一はノンシャランな顔で、
「払えるさ。10兆円の開発費が浮くんだ。1億なんて安いモンだぜ」
「…分かった…本部と掛けあってみよう。次は?」
「次期戦闘機の開発を日本と共同でやると、アメリカ政府が発表するんだ」
「そんなバカな事!出来る訳ないだろう!」
「だったら、アンタとリベンジャーの会話にオレがやらされた事も含めて世界中のネットに流すだけだな。
アメリカは世界中から非難を浴び、アンタ達CIAはカーターやクリントン政権時代に逆戻りさ。予算を大幅に削られ、手枷足枷を付けられる」
もはや、高鍋に選択の余地は無かった。
「…わ、分かった…一応本部には話す。しかし、私のような下端では約束は出来ん…」
「忘れるな。オレはいつでもチェックしている。オレを消そうとしても、情報は公表するからな」
恭一はソファを立った。高鍋がポツリと言った。
「…おまえに頼んだのが間違いだったようだ」
「それは違う。アメリカのごう慢さが、こういう結果になったんだよ」
恭一が部屋を後にすると、高鍋は、慌ててマイケル・リベンジャーを呼び出し事情を伝えた。
リベンジャーのリアクションは早かった。
「分かった、金はオーケーだ。もう一つの条件は、明日、長官との会議で提出する」
高鍋は救われた思いだった。少なくとも、問題は自分の手を離れたのだから。
そして思った。“これでCIAはクビだ”と。
高鍋の居るビルから通りに出て数百メートル進むとクルマが停まっていた。五島だった。恭一は助手席に滑り込む。
「どうだった?」
五島は目を輝かせ、恭一の言葉を待った。
「金は1億になった!」
「スゲェじゃねぇか!」
五島が“ピュウ”と口笛を吹く。
「こっちはロイヤル・ストレート・フラッシュで行ったんだ、負ける訳ないだろう」
嬉々とした表情で語る恭一。
「今夜は祝杯だな!」
五島はシフトをDに入れるとアクセルを踏んだ。クルマは軽いホイールスピンを残して通りを走り去っていった。