Stealth Last-14
「素晴らしい推理だよ。だてに公安上がりじゃないな」
その目に獰猛さが宿った。
「それで?何処に隠した。なんだったら仲間を呼んで、ここで拷問しても構わないが…」
「だから言っただろう。オレのココに入ってるって。CIAにも同じような能力を持ったエージェントが居るだろう」
「まさか…」
高鍋の目が大きく見開く。恭一は一層深い笑みを向けた。
「そう、フォトグラフィック・メモリーだよ、高鍋」
フォトグラフィック・メモリー。カメラのフィルムのように、画像を記憶する方法。現在の諜報界においても特殊な技術である。
「…信じられん…ウチのエージェントと同じ能力を、おまえが備えてるなんて…」
「フォトグラフィック・メモリーは諜報界の専売特許じゃないさ。公安の捜査官でも訓練されてるんだ」
「だったら都合が良い。おまえを本国に招いて情報を引き出すまでだ」
「悪いが遠慮するよ。飛行機は苦手でね。それに、残りの人生を異国の精神病院で過ごすつもりも無いしな」
「だったら、身元不明の遺体でもいいぞ?」
2人は、まるで日常会話でも交わすように語り続ける。
「アンタはオレに手は出せないよ」
恭一は、テーブルに並ぶハードディスクのひとつを指差した。
「こいつは盗聴器だ。アンタとの会話はすべて外でレコーディングしている」
「…ヘタな悪あがきはよせ。この部屋からじゃ無理だ」
高鍋は、恭一の言葉をまるで信じていなかった。
「アンタの欠点は、そのごう慢さだな。自分達が絶対と信じている。まるでアメリカと同じだ。
しかしな。超極短波を使えば、いくら盗聴防止をやっても無理なんだよ、ジョージ」
恭一は“ジョージ”を強調して言った。その瞬間、高鍋はすべてを悟った。以前から盗聴されていた事を。
高鍋の顔が蒼白に変わる。
「…こ、こんな、ブラッフだ!」
視点が定まらない目。もはや動揺を隠し切れない。
「サンプルが欲しいのか。そうだな…アンタの上司がマイケル・リベンジャーってのはどうだ?」
高鍋は、ただ口をあんぐりと開けていた。今や、話のアッパー・ハンドは恭一が握っていた。
「ただし…」
恭一は身体を前のめりにすると、
「2つの条件を飲めば、データは渡してやる」
「な、何が条件だ!」
「まず報酬は1億…」
「そ、そんな金額、払えるハズないだろう!」
高鍋のヒステリックな声が部屋に響く。