Stealth Last-11
「佐倉刑事!」
佐倉は声の方を見た。若い警官が駆け寄って来る。
「第1発見者の証言から、ビルは爆発物によって損壊したようです」
「そうか。まず、爆発物の残留を考えて周辺住人を避難させてくれ」
すぐにバリケードを張るために、半径500メートル以内に住む住人の避難が始まった。
「宮内、署長に連絡して爆弾処理班とレスキュー隊の応援要請だ」
「分かりました!」
佐倉は、崩れそうなビルを見つめて別の事を考えていた。
(…やっぱりアイツだ…間違いない)
次の瞬間、佐倉は身体中が熱くなるのを感じた。
早朝。
「じゃ、いってきます!」
まだ夜も明けぬ暗い中、美奈は自宅を出た。いつもの出勤風景だ。
最寄りのバス停から、バスで20分の距離が播磨重工ビルだ。美奈はひとり掛けの席に座ると、いつものようにイヤホンで音楽を聴いていた。
(な、なんだ…これ?)
それは、あと2つ先のバス停で降りる時だった。混む時間帯では無いのに、道が渋滞してバスが進まないのだ。
(このままじゃ間に合わない…)
いっこうに動かないバスの中で、美奈はジリジリとした焦燥感を募らせる。
(ええい!仕方ない)
突然、美奈は席を立つと、
「すいません!ここで降ろして下さい!」
運転手は慣れた手つきで開閉扉を開く。美奈はバスから降りると、歩道を駆けだした。
「…ハァ…走れば…何とか…」
始業まで残り10分あまり。肩から下げたバッグを気にしながら美奈は走った。
しかし、その途中で彼女は前に行けなくなった。バリケードを張った警官隊が道路を含めて封鎖していたのだ。
「…ちょっと!どういう事なんですか?」
美奈は警官のひとりに喰って掛かるが、警官は“ダメ”の一点張りで理由を教えてくれない。
進んで来たクルマにも、迂回路に誘導するだけだ。
(いったい何が…)
事態を理解出来ないで途方に暮れていた美奈に声が掛る。
「嬢ちゃん!」
声に反応して振り返ると、広野や数人の仲間達が立っていた。
「タケさん!」
美奈は広野に駆け寄り、慌てたように訊いた。
「いったい何があったんですか!?」
「…それが…私達の…播磨重工のビルが、爆発したらしいんだよ」
「エエッ!」
広野の言葉に驚く美奈。
「じゃタケさん、私達どうなるんです?」
「そんな事分かんないよ。とりあえず本社に電話しないと…」
「それなら私が連絡とります」
美奈が携帯で連絡する中、仲間達はバリケードの外で呆然と立ちつくしていた。