G[M]-8
五
銃声が鳴り響く。化け物のうめき声と人間達の叫び声。そのなかで、俺は必死に戦った。横たわる幸太をいつまでも守りながら……。
泣きながら銃をひたすらに撃ちまくる。相手に当たっているかどうかも定かではないほどだ。しかし、それでも連射していたので何発かは当たっていたようだった。
とにかくひたすらに撃ち続け、相手が自分に向かってこなくなるまで海斗は撃ち続けた。
“カチッ”と音がして、これまでのような銃声は聞こえなかった。弾がないと分かっていながらも、何度も何度もカチッとならす。
やがてこのままではやられてしまうと気づき、逃げようと思った。心の底から震え上がり、身が凍るような思いだった。足がもつれそうになりながらも必死に足を前へと押し出す。
もう大丈夫だろうと言うところまで来た海斗は、とりあえず落ち着こうと息を整えた。ベンチに腰掛け、深呼吸をしていると内庭から各階の状況が把握できた。そこで、海斗は目を疑った。
今海斗がいるのは二階。一階を見るとアグリーが三体。三階を見るとアグリーが二体。計五体。おかしい。何故こんなにいるのだ。悩んでいる暇はなかった。各階にいるアグリーは続々と二階へ集まってきた。おそらくこの二階にも何体かいるはずだ。だとしたら俺はもうダメだ。
急いで逃げようと足を浮かせたとき、両脇から一体ずつアグリーが。もう無理だと頭では諦めても、体は諦めていない。必死になって縮こまり、最後の最後まで逃れようとする。その後ろからは何体ものアグリーがぞろぞろ増えてきた。
ヤバい、殺される。本気でそう思ったとき、家族全員の顔が脳裏をよぎった。
『お疲れさま。よく頑張ったね。』
優しい男性の声は、何よりも温かい言葉のように思えた。
『ギリギリだったね。』
『え?』
『ギリギリのところでタイムオーバーになったから死なずにすんだんだよ。』
ヘルメットをはずしながら男は言った。
『残念ながら君の相方さんは先にゲームオーバーだったみたいだけど。』
海斗は幸太の方に目をやるとベッドに寝ている幸太がいた。こいつはゲームが下手いくせに、こんなリアルなゲームでも弱いんだな、と微笑んだ。
『楽しめましたか?』
海斗はゆっくりと深く頷いた。そして、こう付け足した。
『質問なんですけど、最後にアグリーが急激に増えたのは何でですか?』
海斗の質問に軽く答えた。
『簡単な事だよ。時間が一分を切ったから増えただけの事さ。』
『そんな単純な理由ですか?』
心底驚いた風に海斗は言った。
『あれリアルすぎるからめちゃめちゃ怖いんですよ!!』
『それがこのゲームのいい所じゃないか。』
『まあ、そうなんですけど。』
頭をぽりぽりとかきながら言った。すると、その直後に男は立ち上がりこう言った。
『さて、そろそろ僕たちは行くよ。このゲームは、来年になるとゲームセンターなどで遊べるようになるから。だから、君たちはそのためのお試しというか、感想を聞くためにやってもらったんだ。』
そこまでは良かった。しかし、次の言葉が一番驚いた。
『それじゃあ、お試し代1万円もらうね。』
そう言って、手を差し出したのだった。
『えっ………。』
それ以上声が出ず、ぽかんとしていた。
『冗談だよ!!金なんてとんないさ!その代わりもらった物はもらったからさ。』
よく分からなかったが、そのまま流した。
『じゃあ。』
『ありがとうございました。とても楽しかったです。』
手を振って男を見送り、ベッドにどさっと座り込んだ。あっ、と言う風にして幸太を揺さぶる。
『おいっ、幸太!!起きろよ!!!帰れよ!!』
いつまでもここにいられたんじゃこっちもたまったもんじゃない。早く帰ってもらいたかった海斗は、ばしばし叩いた。しかし、幸太はびくともしない。
『なんだってんだよ。』
と愚痴をこぼしながら、まさかとは思いつつも口に手を当てる。
そのとき幸太は息をしてなかった。