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あなたを知りたくて
【学園物 恋愛小説】

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あなたを知りたくて-5

やっぱ帰ろう!
来いって言われたからってバカ正直に来たら笑われるだけの気がする。

それにせんせには関わらない方がいい…。

踵を返して階段へ戻ろうとしたらわずかにコーヒーの香りがした。

美月は先程の決意はどこへやら、香りに惹かれるように谷川のいるであろう準備室にフラリと足を向けた。

ドアの把手に手をかけようとして慌てて引っ込める。

開けたらもう戻れない気がする…。

開けたい気持ちとこのまま帰りたい気持ちとが美月の中でせめぎあっている。

そんな美月の目の前でドアが開いた。

突然の事で逃げ出す事もかなわず、体をビクッとさせた美月を笑って谷川は見下ろした。

「入れば」

呪文をかけられたように美月はドアの内側に入った。


「突っ立ってないで座れよ」

谷川に促されて美月は向かいに椅子を持ってきて腰を下ろした。

谷川は昨日のカップと砂糖の入ったガラス瓶を美月の前に置く。

やっぱりキレイ…。

ガラス瓶を手の中で回しながら光に透かして眺める。

「瀬尾はそれがお気に入りだな」

そんな美月を見て机の中からある物を取り出し手渡した。

「ほら」

「プリズム?」

美月はガラスで出来た小さな三角柱を光に透かしてみた。

「もっと窓際でないと見れないぞ」

谷川は背後にある窓を指差しブラインドを開けた。

美月は光の入る窓際にプリズムを置く。

西日を受けてプリズムからは七色の虹のような光が放射されている。

「わぁっ!」

「何だ?初めて見たのか?」

いちいち感動する美月を面白そうに眺める。

「こうするともっとよく見える」

美月に覆いかぶさるように背後からプリズムを取り、一番西日が射している所でかざす。

まるで抱きすくめられるような体勢とふわりと漂う香水の香りに美月の鼓動は早くなる。

谷川を見上げた美月は意外な程に谷川の顔が近くにあって息を飲んだ。

「どうした?」

谷川の問いに慌てて顔を伏せて呟く。

「別に…」

「コーヒー冷めるぞ」

プリズムを美月の手のひらに置きブラインドを閉めた。


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