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あなたを知りたくて
【学園物 恋愛小説】

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あなたを知りたくて-4

「遅くなってごめん」

声を潜めて謝ると、特に気にした様子もなく彼女は笑って首を振った。
本好きの彼女の事だから気兼ねなく本を読めて喜んでいたかもしれない。

美月もカウンター内に座って先程まで読んでいた本を開く。

文字を目で追うが内容は全く頭に入ってこない。

自分でも怒ってるのか戸惑ってるのかわからない妙な感情を抱いたままページを捲る手を止めてため息をついた。


一方、部屋に残された谷川は眼鏡をかけ呟いた。

「油断したな…」

今まで校内で眼鏡を外した事はなく、今日は部屋に1人だったのと誰もこんな場所に来ないだろうと思っていたのだ。

「犬並の鼻だな」

コーヒーの香りがしたからと言った美月を思い出して思わず笑った。

美月の艶やかなストレートの黒髪は染めている生徒が多い中ではかえって目立つ。
まるで日本人形のような風貌が以前から目を惹いていた。

美月は気付かれてないと思ってるようだが、手を握った時に頬が紅潮したのを谷川は見逃さなかった。

「可愛いねぇ」

自分の小指を眺めて呟いた。





今日、谷川せんせの授業がある…。

昨日の今日で気まずいな。

美月はモヤモヤした気持ちを抱えたまま机に向かう。

『明日も来いよ』

谷川の言葉が頭から離れない。

あのせんせ、何だか怪しいよね?

カッコいいくせにダサ眼鏡で隠してるし、口調も授業中と違ってた。

「……さん」

後ろの席の子に背中を突かれ物思いから覚める。

顔を上げると谷川がこちらを見つめていた。

胸がドキッと高鳴る。

「瀬尾さん、僕の授業が眠くても、もう少しなんで我慢してください」

教室が笑いに包まれる。

別に眠い訳じゃないもん!

そう口に出したかったが結局美月は口をつぐんだ。





廊下には生徒の姿はなく、グラウンドからは部活の声やざわめきが聞こえる。

元々図書室やいくつかの準備室しかないこの階は、普段でも近づく生徒は少なく放課後となると人影はほぼない。

今日、図書当番でもない美月はここにいる理由がない。


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