あなたを知りたくて-3
「別にいいけど…」
美月の言葉に谷川が小指を差し出す。
不思議そうに見る美月。
「指切り」
促されるままに指を出そうとした美月の手が空中で止まり机に降りた。
「どうした?」
「またコーヒー飲ませてくれる?それと…」
「それと?」
「…2人の時は眼鏡を取って」
谷川はフッと微笑むと強引に美月の手を掴み小指を絡ませた。
「その条件飲んでやるよ」
「せんせの方が立場弱いと思うけど?」
急激に跳ね上がった心拍数を悟られないように装ったつもりだった。
「条件を出した時点で立場は同じだろ」
強気な谷川に負けるもんかと美月は言い返す。
「私は困らないもん」
「教師と2人きりで手を握り合ってんのを誰かに見られても?」
よく考えれば谷川の方が分が悪いのがわかるのに、冷静な判断が出来ない今の美月は更に頭が真っ白になり返す言葉がない。
「契約成立」
ようやく美月の指を解放して呟く。
慌てて手を引っ込め席を立った美月を面白そうに眺めていた。
「明日も来いよ」
谷川の声を背に美月は部屋を出て行った。
何なの?あいつ!
ただのボーっとした教師だと思ってたら中身はとんでもない奴じゃない!
当初の目的だった教室に寄る事も忘れて、とりあえず当番を任せきりにしている後輩のいる図書室へ急いだ。