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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉中編-8

「各自コンディションを整えてから動いてくれ。オレは今から上で情報を得てくる。」

カルサが立ち上がると続くように周りは立ち始めた。カルサは振り返り、その瞳の中にナルの姿を映す。そして階段を下りて、瑛琳の横に立ち彼女と同じ目線で願った。

「ナルを頼む。」

その切ない表情に、瑛琳は思わず目に涙を浮かべ、たまらず頭を下げた。

やがてカルサが足を進み始めると、千羅は瑛琳の肩を優しく叩いてカルサの後に付いていった。いつしか二人の姿は消え、残された貴未も足を進め始める。

「よし、じゃあ行くか!マチェリラ!」

「ダメよ!貴未は少し休まないと!」

先に歩く貴未を止めるようにマチェリラは彼の腕を掴んだ。貴未はゆっくりと振り返り、優しく微笑んだ。

「今回はオレは付き添いだもん。働くのはマチェリラ。休みみたいなもんだって。」

「でも!」

続きを言おうとするマチェリラの声を止めたのは、寂しげな貴未の笑顔だった。何も言えなくなったマチェリラの手が力なく離れていく。

「貴方の部屋に食事を用意しておいたわ。」

瑛琳が立ったままの位置から声をかける。

「ねぇ、貴未。せっかくだから、食べていったら?」

状況が飲み込めずに貴未とマチェリラは目を丸くさせて瑛琳の方を見ていた。それでも淋しく微笑んだままの瑛琳の姿を見て理解をする。

貴未は微笑み、手を挙げた。

「分かった、そうする。ありがとな!いってきます!」

瑛琳も応えるように手を挙げた。何を意味しているのか理解したマチェリラも微笑み、貴未と共に姿を消した。

そして一人になった瑛琳の下にラファルが近寄ってきた。瑛琳は階段を下りて彼のフィールドに立つ。相変わらず階段から上は進もうとはしなかった。

「ラファル。ありがとう。」

ラファルが口にくわえて運んできた聖水を受け取った。蓋をとり、勢い良く宙にばらまく。それと同時に瑛琳の力で祭壇の周りを水の膜を作った。聖水はその上に貼りつくような形で撒かれたことになる。

「これで少しは清らかな空気の中で眠ることが出来る。」

瑛琳は聖水の入っていたビンをラファルに返した。そして再びナルの方を見る。

見つめているだけで涙が溢れそうだった。頭の中で反響しているのはナルの手紙。

それはあまりにも信じ難い内容だった。


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