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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉中編-6

「あそこはカルサの結界だったんだな。そうか、聖の結界は…。」

「結界石を使ったものだった。」

貴未の言葉に付け足すようにカルサは呟いた。

「だから無事だったって理由か。で、リュナはどうした?」

貴未の問いにカルサは何も言わずに首を横に振る。その姿を見た貴未は少し肩を落としてしまった。

「外の魔物を倒しきった後、どこかに行ったみたいだ。皇子が桂を送ったんだが…。」

「自分のやるべき事をすると、風を身に纏い姿を消したらしい。」

千羅の言葉にカルサが付け足した。最初走りだした目的はレプリカを探していたからのようだが、レプリカを見つけた後に様子が変わり姿を消した、と続ける。

「そのレプリカは重体か。大分リュナの行動が読めるな。」

貴未が呟く。おそらく彼女は自発的に敵地に向かったのだろう。きっと今も一人で戦っている。

「その後に結界石の間に行って残骸を確認した。戦った跡もあったし、その辺はおそらく紅奈しか知らない。」

千羅の言葉に貴未は黙って頷いた。そして視線を落とし、呟くような声で千羅に問いかける。

「それで…ナルは?」

言葉足らずでも何を聞きたいのかが伝わる。ナルがどこで、どんな風に息絶えたのか、それが知りたかった。

カルサは俯き加減で、自分の手元を見つめたまま動かなかった。千羅はそれを確認した後、ゆっくりと口を開いた。

「玉座の間に、倒れていた。」

千羅が駆け付けた時はまだかすかに息があって、何かを訴えるように息を引き取ったと続けた。それが気になりナルの部屋を探ったところ、あの手紙が出てきた。しかし、千羅にはまだそれ以外に伝えたかった事があるのではないかと思えて仕方がない。

「誰か、残留思念が読み取れれば解決するが。」

「それが出来たナルがもういない。」

千羅の言葉に付け足すようにカルサが続けた。

「あの方は偉大だった。何が何でも守らなければいけなかったのに!」

後悔の念が瑛琳を襲う。手で頭を押さえ、抱えきれない強い思いに押し潰されそうだった。瑛琳が珍しく見せたそんな姿に、千羅の表情が歪む。

誰もが悔やみ、空気は重たくなっていった。


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