光の風 〈回想篇〉中編-4
「陛下。」
交戦中の兵士が呟いた。
「加勢する！一気に潰せ！！」
カルサの声に兵士達は一斉に叫び声をあげた。再び交戦が始まり、カルサも次々と魔物を薙ぎ倒していく。
「エプレット！無事だったのか！」
ぼろぼろの姿の兵士が、名を呼んだ兵士の下へと近付いていく。彼を迎え入れたのはカルサと共にここへ戻ってきた兵士だった。
「皆大丈夫か！？」
「この状況じゃ分からない。しかしまさか陛下を連れてくるとはな。」
軽く言葉を交わすが、エプレットは手を顔の前に差し出し終わらせる仕草をした。
「話はあとだ、オレは陛下を守りに行く。そっちは任せた。」
そう言うと走りだしカルサの傍に向かっていった。
前を行くカルサは勇敢に攻め続け、確実に魔物を倒していった。エプレットは必死にカルサに近付き、周りにいる魔物を相手に戦い始めた。人とは違う大きい体から出される刄は獣に襲われている感覚と似ている。ただでさえ押し負けそうな力の差、気を抜けば確実に体を突き抜けられる。そんな恐怖が沸き上がってきた。
「怯むな！立ち向かえ！」
兵士達の気持ちを察知したかのようにカルサが叫んだ。誰もがその声に目を覚ます。
「無駄死にするな！！」
さらに背中を押すようにカルサは続けた。自然と剣を持つ手に力が入る。
「はい！！」
ここは戦場、背を向けたら負ける。そんな当たり前の事を思い出しながら、兵士は自分の気持ちを奮い立たせた。自分達が逃げたり負けたりしたら、中にいる民達の命は無いにも等しい。
覚悟を決めた心が闘志を高める為の叫び声を上げる。
「うおおぉっ！！」
兵士達の動きが一気に変化した。覚悟を決めた、ただ1つ構え方が変わっただけでこんなにも人は強くなれる。それを肌で感じながら、カルサも手を休める事無く剣を振り続けた。
「陛下！」
遠くから呼ぶ声が聞こえた。声の主は戦地を潜り抜けカルサの下まで走ってくる。
「どうした？」
「大変です、中で民達が騒ぎ始めました。」
「民が？」
少しだけの会話をしている隙に一体の魔物が間を縫ってカルサに突進してきた。