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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉中編-20

「申し訳ございません。」

不謹慎にも涙を流してしまった事を謝罪した。しかし拭っても拭っても止まる事を知らず、涙はこぼれ落ちていく。

「お前が泣くか。」

優しく耳に入るカルサの声が余計に胸を締め付ける。

「申し訳ございません。ただ、あまりにも。」

辛すぎる現実に胸が痛み、思わず身を屈めるような仕草を繰り返した。涙を堪えようと上を向いても、たまらず身を縮めるようにうずくまる。

「レプリカ。」

カルサが名を呼ぶ。彼女の意思を尊重し、カルサはレプリカと呼び続ける事を決めていた。

カルサの呼びかけにレプリカは何度も頷く。

「私は、確かにあの時代に生きていました。まだ幼かった分、記憶は曖昧ですが、覚えているものも沢山あります。」

涙で震える声を懸命に絞りだし、何かを伝えようとしているようだった。

「皇子が、暖かい光の中で生きてらした事も私は知っています。強く優しく、ご自分に厳しいところにお変わりが無い事も。」

胸を締め付ける苦しさに耐えるように右手は強く心臓辺りの服を掴んでいた。左手は強く握り締められている。

「日向様の事も、皆の記憶から消されていても私は覚えています。だから尚更!私は辛い!」

レプリカの言葉に二人とも強く反応を示した。

「何故貴方様だけがこのような目に合わなければいけないのですか!」

感情が高まりすぎて、レプリカも自然と声を荒げていた。千羅には彼女の気持ちが痛い程よく分かっている。

それはずっと彼が抱えている気持ちと同じ。

「悔しい。心のすれ違いは…ここまで人を苦しめるものですか!?」

レプリカの叫びに千羅が反応しているのが分かった。二人の熱い思いはカルサを切なくさせる。

「レプリカ、お前が泣く事じゃない。」

カルサの諭すような落ち着いた声が切なさを増す。レプリカは短く頷くが、それでも耐えるように俯いたままだった。

「お前が辛くなるような事じゃない。」

さっきよりも大きく、勢い良く二度頷いた。カルサは前かがみになりレプリカとの距離を縮める。

「昔と今とオレは変わっていないか?」

今までとは違う雰囲気をだすカルサに促されたのか、レプリカは顔を上げた。寂しげに微笑む彼を見て、落ち着きを徐々に取り戻し応えようと呼吸を整えた。


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