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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉中編-18

「大丈夫です、構わない。」

この状況、レプリカの状態も分かった上で千羅は伝えた。

「教えて下さい。」

優しく低く響く声は、威圧でもなく、お願いをしていた。千羅の想いを受け、少し考えた上でレプリカは頷いた。

声にするのに勇気がいる。カルサの姿を見て、それでも千羅に応える為に顔を上げた。

「深い碧い瞳をした、ライムという少女を知っていますか?と、尋ねました。」

その存在は千羅の世界からさえも音を奪う。

「ライム。」

思わず漏れた小さな声は無意識に出たものだった。千羅もカルサと同じように目を大きく開き、動揺していた。しかしカルサよりは冷静だった。

千羅はカルサの方を向いて、全てを察知する。

「そうか。」

表情が苦々しく歪む。千羅は納得の声を出したまま、続く言葉を押し込んで黙ってしまった。カルサの肩に手を乗せ、きつく目を閉じる。

千羅にはカルサの苦しみや辛さが分かっているのだろう。

「それで、リュナの情報はカルサに伝えていただけたのでしょうか。」

少しレプリカが俯いている間に千羅は気を取り戻したらしい。いつものように振る舞っていた。

まるでその流れに乗り、心安らかになるようにと促されているようだ。レプリカは手を取るように心を静めていった。

「先の神官・環明様からお預かりした方で、環明様のお子であるという事。風の力は環明様より直々に引き継いだものであるという事。しかし、おそらくは環明様のお子ではないかもしれないという事をお伝えしました。」

レプリカの話は簡潔にまとめられたが、複雑な背景があることは容易に感じられた。

「今回の襲撃で不思議な少女に出会いました。皇子の真実を問う少女に覚えはありますか?と尋ねたところです。」

話の道筋が繋がり、千羅は何度も頷いた。

「何か、深い縁がある方ですか?」

勇気がいる質問だった。自分が踏み入るにはあまりに恐れ多いのかもしれない。おそらくそうであろう事も気付いていたが、聞かずにはいられなかった。

あの少女は特殊な力を持っていた。御剣、古の民、いずれに当てはまるのは確実だろう。しかし、何故セリナの事を知っているのか。含んだ言い方だったが、明らかに何かを知っているはずだ。レプリカは、あの少女が何者か、気になって仕方ない。

 千羅はカルサの様子を見た。偶然か、それと同時に千羅の服を掴む手が緩み、縮めていた体をゆっくりと開くように体を起こした。

「カルサ。」

「大丈夫だ。すまない、取り乱した。」

顔を起こし、改めて二人の顔を見る。心配そうに様子を伺っていた。


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