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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿
【ファンタジー その他小説】

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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-5

 真琴の立ち直りは早かった。
「あんた、アタシを起こすまでに様子見てきたりは……」
 しかしいつものように天使は真琴の予想の右斜め上を行く。
「見てみてー、面白いから!!」
 美由貴の右手には、どこから持ってきたのか、カッターナイフが握られていた。
 チキキキ……と刃が押し出され。
 近くにいた、停止した女子生徒の腕に、切りつけた。
「!!?」
 女子生徒の腕から、血が吹き出る。
「…っ!?」
「ねー」

 バコン!!

「ぃたいっ」
「何やってんのあんた!? あんたマジで脳みそとろふわスライムなんじゃない!? やっていいこと悪いことあるでしょうが!!」
「うぅ違うもん……」
 言い訳など聞くわけもなく、とりあえず止血だけでもしようと、
「アレ?」
 ハンカチを取り出したが、既に女子生徒の傷は跡形もなく消えていた。
「これ……干渉を拒否してる?……それとも時間が止まった時のままに元に戻すの……?」
 ……駄目だ。真琴の経験不足もあって、この〔現象〕が何を意味してるのか、分からない。
 どうも美由貴は何か分かっているようだが、
「……だからね、サブプライムローンって最初から破綻するって分かってたでしょ? イラク戦争は結局のところオイルマネーが目的で、つまり日本は憲法九条を即座に破棄し核という武器を持つことで軍事的に米国からの独立を目指し靖国参拝は正当なものだと中国等アジア諸国に訴えるべく」
 なんかスゴくヤバそうなことを消火器に向かって演説してる。先程話を聞かなかったことで拗ねて心を閉ざしてしまったようだ。いやどう考えても美由貴が悪いので謝るつもりはないけど。
 とにかく、天使からの説明は早々に諦めた。真琴は自分で調べるべく、カバンを探る。
「今日持ってきてたかなー……」
 必要になると思っていなかったので、殆ど道具を持ってきていない。
「……あちゃ、〔幻影水晶〕〈ファントムクォーツ〉しかない」
 ――真琴の流派では、〔現象〕は〔意志〕によって引き起こされるものとされている。だが大抵の場合は人間一人〔意志〕の力は限界があるため、儀式や生贄、もっと単純に人数を多く集めてより大規模な〔現象〕を起こすのが普通だ。
 しかし人数を集めたり、仰々しい儀式をわざわざするのは効率が悪い。だから、〔意志〕を増幅し指向性を持たせ、特定の〔現象〕を引き起こすアイテムを先人たちは造った。それを真琴は〔増幅器〕〈アンプ〉と呼んでいる。
 真琴の〔増幅器〕はペンジュラム。ペンジュラムとは、一般的にはダウジングなどの占いに使われる、円錐形または多角錐形で出来た水晶などの石にチェーンを繋げた振り子のことだ。ペンジュラムの石によって起こる〔現象〕が変わり、普段は複数持ち歩いている。
 しかし今持っているのは、それなりに利便性は高いが危機に対する対処が難しい〔幻影水晶〕製のものしかない。なんで今に限って持ってないのかというと、バカ天使のバカな行動のせいでバカになったペンジュラムが多数あり、……思い出すだけでイライラしてきた。〔幻影水晶〕だけでは正直心許ないが、
「ないよりマシか。とりあえず校内を調べてみよ」
 目を瞑り、精神統一。真琴の無意識が、ペンジュラムを揺らす。


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