電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-4
まだ第一回目のためか、観客は真琴と美由貴の二人だけだった。
映画そのものは、まあ高校生が作ったのでクォリティはそれ程高くはない。しかし、映画の撮り方を知らない真琴からすると、スゴく本格的なものに感じた。
内容は、謎の鏡があってその鏡に秘められた謎を解くというもの。鏡には人を吸い込む力があり、鏡の中の世界と現実の世界が舞台となっている。
しばらく見ていると、真琴の自宅である神社が出てきた。
……と思ってたら、なんと美由貴も出てきた。何故!?
「あれぇ?」
「ちょっと、なんであんたが出てんの!?」
「いやあ、スゴいね、ドッペルゲンガーだね」
いやどう見ても美由貴だ。巫女装束を着て、鏡のお祓いをしている。だから何故!?
「美由貴ねー、物心落ちた時から記憶出来ないんだよねー海馬が回らなくて」
「もういい」
多分、おそらく、神社の関係者ってことで人手不足の演劇部から頼まれたんだろう。見たところ、少なくとも本番では余計な言動はしてないようだ。……目を見開く癖は直した方がいいと改めて思うけど。
ストーリーは多少ご都合主義はあったものの、大きな破綻もなく、なかなか悪くなかった。
物語はクライマックスに入り、鏡に邪念を込めた悪霊と対決になり、悪霊が主人公に襲い掛かった瞬間!
――真琴の意識は、ここで途切れた。
―――――――――――
『…………』
そこは、刹那の永遠。
『――――』
静と動、生と死。矛盾するはずの要素が、矛盾なく存在する世界。
『・・・・』
真琴が戻れたのは、
「――土管がどっかーん!!」
「うわっ!!?」
有り得ない奇跡が、既に起きていたからに過ぎない。
―――――――――――
「あははやったぁ! ドッキリビックリ大成功!!」
「な、に、いきなり何!?」
前後の状況が掴めず、真琴は飛び起きた。……飛び起きた?
「ここどこ?」
暗い。目がまだ暗順応出来ていない。
文化祭で、映画を見ていて、いきなり暗い場所で大声で起こされた。真琴の現状認識はそうなっている。
「……映写室? 停電したの?」
「ふっふ?」
「……ああ説明はいい、目が慣れてきたから」
自分で確かめた方がいいだろうと、扉を開け、廊下に出る。
「……………っ!!?」
しかし、真琴の現状認識は、更に混乱する。
「なん、みんな!?」
人も、電飾も、雲も、煙も、音も。
全てが固まって、動かない。まるで、
「ふっふ、どうもねー、時間が一時停止しちゃったみたいですねーふっふー」
天使が珍しく分かりやすく、認めたくない現実を、ふわふわと楽しげに告げる。
文化祭は真琴達を取り残して、停止した。