電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-15
「――記憶を?」
「ふっふ。ホントはねぇ、ぜーんぶ消した方がいいんだろぉなーだけどもだけど♪ そんなの関係ねぇ、ってアレ?」
「いや何ですか?」
「うー忘れた、オギノシキ忘れたぁ!!」
「……消火器? あれがいるの?」
「ふっふ。まあいいや、アナタにあげちゃうー♪」
「いやいらな」
「――あげるって言ってる」
「………。」
「もう、そんな怖い顔しないでくださいよー☆」
「……わかったわ、貰っとく……けどなんか意味あるの?」
「いつか役に立つから! 家事がいやになって家を燃やして火事にしたときとか」
「いやしない……まあ、貰っときます」
「役に立つから、『絶対』。……だからねあのね、真琴の友達になってあげてほしいの!!」
「小林さんの?……なんで、私? いやいいんだけど」
「キャラ被ってるから、ウマが合いそうだなぁって。そーゆーことぉ♪」
「……うん、分かった、よく分からないけど」
「じゃこれハイ」
「……えっと……ザラメ?」
「綿飴の元ー、ふわふわになるから! アレだけど、綿飴って頬張りすぎると口に残るよねー」
「……」
「じゃ、案ずるより産むが易し三途の川は意外に浅いってことで! バイバァイ☆」
「……。消えた……ヘンなヒトね」
――屋上から、空を見上げる。
夕焼けが、朱く校舎を染めていく。
「クラスの後片付け、手伝うか……出来ること、あるかな……?」
―――――――――――
これは、あくまで日常に産まれた非日常の逸話の一つに過ぎない。語られなかった逸話は山のようにある。
その逸話全てが決して楽しいだけではないけれど、それでも。
きっと、みんなの記憶に残った。
今はそれでいい。