電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-11
とりあえず、倉本先輩を起こさないと、と思ったらちょうど起きるところだった。
「大丈夫ですか?」
一応、美由貴がやったことだから心配はいらないだろうが、あくまで形式として声をかけた。
「……私、気絶してたみたいね。でもその間に何も対策立てなかったの?」
嫌みではなく本心なのだろうが、なんというか、投げやりだった。
〔増幅器〕に宿った〔意志〕を、もしかしたら知っているのかもしれない。リスクを知りながら、それでも文化祭の時間を止めた理由。
文化祭を楽しみたいなら、途中で止めたりはしないだろう。時間を操る〔増幅器〕なら、もしかしたらループして、延々と文化祭を繰り返しているかもしれない。そうじゃなくても、止めたりはしないだろうと思えた。
文化祭が嫌ならば、それこそ〔増幅器〕を使ってまでこんな〔現象〕を起こさなくていい。サボるなりすれば、文化祭は勝手に終わる。〔現象〕に縛られるなんていうのは、本末転倒だ。
倉本先輩の、文化祭に対する想い。それを知らなければ、倉本先輩の〔意志〕は、殺せない。
「先輩、散歩しませんか?」
キョトンと、三人が全く同じタイミングでハテナマークを浮かべる。
「この文化祭。一緒に見て回りませんか? アタシ達四人で」
「あなたと?」
「はい、アタシと、仲町先輩と、アキと、倉本先輩、あなたと」
倉本先輩だけでなく、他の二人も戸惑っていた。唐突な提案だから仕方ない。だけど、大事な意味が、ちゃんとある。
「断る理由は私にはないわ」
先に決断したのは、やはり倉本先輩だった。
半ば引きずられるような感じで、仲町先輩とアキも、頷いた。