スキ-2
俺が香奈に会ったのは一年生も半ば以上過ぎた、冬の始まる頃だった。
「てぇっ…!」
「大迫!大丈夫か?!」
空中でボールを奪い合った時ブロックに来た相手とぶつかり着地に失敗。
足を痛めてしまった。
「大迫くん、保健室に行こ」
マネージャーの伊藤がすっ飛んで来て俺に肩を貸そうとする。
俺は丁寧に断って保健室へと向かったが伊藤が心配げに後を付いてくる。
「せんせー」
ドアを開けて保険医を呼ぶが返事がない。
とりあえず近くにあった椅子に座り部屋を見渡すと女生徒が一人隅っこで何やら書き物をしている。
この女生徒が香奈だった。
伊藤が俺の手当てをしようと湿布などを探しているが薬品棚には鍵がかかってるらしく取り出せない。
「先生呼んでくるね」
「あっ…」
伊藤の後ろ姿に香奈が振り返り声をかけようとしたが伊藤は気付かず出て行った。
「どうしたの?」
物言いたげな香奈に訊ねると香奈は申し訳なさそうな顔で答えた。
「今…先生用事で外出してるの」
それで呼び止めようとしたが間に合わなかったって事か。
「じゃあそのうち戻ってくるんじゃね」
俺は足をプラプラさせながら内心まいったなーと思っていた。
「足…どうしたの?」
俺の足に視線を向ける香奈に苦笑いした。
「あー、ちょっと捻ったみたい」
香奈は先生の机の引き出しから鍵を取り出すと薬品棚から湿布とネット状の包帯を取り出した。
「鍵あったんだ」
俺の前に屈んで足首に湿布を張る香奈に呟くと悪戯が見つかった子供みたいに俺を見て笑った。
その笑顔に俺の心音が跳ね上がった。