冬の観覧車 ◆第三話◆(最終話)◆-6
全然悪いことなんて全然してない青野美千代ちゃんを焼死させました。
熱くて、痛くて、苦しくて、そんな中で、たった一人ぼっち、死なせました。
わずか五歳の少女を僕は殺しました。
そうとはしらずにそのあと、僕は友達と三人で愉快に笑いました。
腹を抱えて笑いました。
何も可笑しくなんかないのに。
声を上げて笑いました。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
誰に?
誰に謝っている? 僕は。
こんな懺悔を、誰が聞くの?
青野美千代ちゃんは僕を許さない。
青野美千代ちゃんのお父さんは僕を許さない。
Hey Hey rabbit だって、僕を許さない。
僕だけが、僕を許し、僕を生かす。
やがて立ち上がった僕は、もと来た道を戻った。
ゆっくりと一歩一歩、歩いた。吐く息は白い。
街の雪はもう溶けているのに、ここはまるで真冬みたいだ。
僕は今日を生きるだろう。
明日も生きているだろう。
多分、十年後も。
飯を食ったり、風呂に入ったり、暖かいベッドの中で眠りをむさぼったりしながら。
仕事をして、たまにはおしゃれな服を買ったりとか、恋をしちゃったりしたりなんかしながら。
そうして、僕はやがて大人になるだろう。
僕のことなんて何も知らない、
僕のことになんて得に興味のない人たちの溢れる社会の中で、逞しく生きていくだろう。
そして、そのうち僕の過去なんて知らない人と恋に落ちて、都合よく結婚しちゃったりなんかして。
そんでもって、もしかしたら子供なんかも生まれるかもしれない。
幸せな気持ちにだってなれるかもしれない。
そうしたら、その時。
僕と、僕の愛するハニーの間に誕生したスウィートベイビーは、こんな僕を。
僕のことなんて何も知らない無垢なスウィートベイビーは、こんな僕のことを。
間違いだらけの僕を。
その愛くるしい声で。
『パパ』って、呼んじゃうの?
fin