冬の観覧車 ◆第三話◆(最終話)◆-5
夏の炎天下の中、幸せそうに家族が歩いているところなんて、まるで想像が出来ない。
僕の目の前の光景は、冬の女王がその冷たい吐息を吹きかけてしまった後みたいだ。
そして、その吐息が、時間の流れまでも凍りつかせてしまったようにも感じる。
僕は思わず身震いをする。
静止したメリーゴーランドの白馬が、僕を睨みつけているような気がしたのだ。
その鋭い眼光は、遊園地さながら僕の動きを止め、
危うく心の臓までもがその活動を停止してしまうような気がした。
それは、どこかでは僕の望んだことなのかもしれなかったが、それはどうやら勘違いだった。
僕は動きを止めたまま、暑くもないのに額から汗が流れ落ちるのを感じる。
ふいに、心細さを感じる。
僕は泣いた。
どこへ行けば良いのか分からない。
何をすればいいのかも分からない。
警察へ行って自首? そんな勇気、僕にはないよ。
首を吊る度胸だってないし。
だらだらだらだら生きていって。
僕が生きることを望む奴なんて、ほんの一握りしかいないって言うのに、それでも生きて。
そんで、その先に、僕は何を見つけるんだろう?
十年後、数十年後、僕はどんな場所に、どんな表情でたっているんだろう?
うずくまる。涙は止まらない。
今まで泣いていなかったのに、どうして今泣いてしまうのか、それも分からないけれど。
僕は泣いていた。
「ごめんなさい。」気づけば呟いている。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
青野美千代ちゃん、青野美千代ちゃんのお父さん。
青野美千代ちゃんのお母さん。青野美千代ちゃんのおばあちゃん。
青野美千代ちゃんのおじいちゃん。青野美千代ちゃんのお友達、ごめんなさい。
僕が青野美千代ちゃんを殺しました。