冬の観覧車 ◆第三話◆(最終話)◆-4
あの頃、まだ誰も傷つけていなかった頃に戻りたいって。
本当に、たまに思うの。
ジン、元気にしてる?
アタシは本当に二人ともすごく大切で、でも、こうなっちゃうと、
隆二君のこと本当に大切にしなくちゃって思って、
だから、こういう風になっちゃって、本当にごめん。
えっとね、話はね、これだけじゃないんだ。
アタシね、隆二と二人で話して、決めたの。
アタシ達、結婚したいなって思ってて、でもね、なんか、
その前にしなきゃいけないことがあるんじゃないかって、思ったの。
このまま居られたら幸せなのに、そこから逃げちゃいけないっていう気持ちにね、
最近なってきたの。
おぼえているでしょ? あの時の事。
絶対にしちゃいけない間違いを犯しちゃった日のこと。
アタシね、隆二と二人で自首するから。
そして罪を償って、そうしたいなって思うの。もう、逃げちゃいけないって思うの。
でも、勿論ジン君の事は話さないから。
アタシと、隆二の二人でやったって、警察に言うの。
でも、怖い。そうなったら、どうなっちゃうんだろう?
どのくらい牢屋の中に居なきゃならないんだろう?
まさか、死刑って事はないよね? 三年かな。五年かな? もっと長いのかな?
全然分からないけど、多分、結構長い間、出て来れないと思うんだ。
でも、そうしなきゃいけないような気がして。そうすることにしたの。
もう決めたの、隆二と、アタシの二人で。
だから、もうジン君とはしばらく会えないし、連絡も取れないね。
一応このメールは消すから、ジン君も消して。なんかあったら、困るから。
勝手でごめんね。
でも、これはジン君にも言っとかなきゃって思うから、だから、メールした。
ジン君、元気でね。
じゃあ、また。
遊園地の入り口に立って、僕は笑っていた。
やけに可笑しくて声をあげて笑った。気が狂ったみたいに。
冬に遊園地がやっているわけがないって事に、無人の遊園地の姿を見てはじめて僕は気がついたのだった。
門には柵が降りていて、遊具は一つも動いていない。
メリーゴーランドも、コーヒーカップも、そして、勿論観覧車も。
全てが凍り付いた様に静止している。