冬の観覧車 ◆第三話◆(最終話)◆-3
隆二が、慌ててサクラの方へ視線を向ける。いいよね、アタシから言うから。
サクラはそんな視線を隆二へ向ける。隆二は黙り込み、ようやくコーヒーに口をつける。
「アタシ達ね、付き合うことになったの」
世界が一瞬ぐらり、と揺れた。
「そう、おめでとう」と僕は言った。僕ではないほかの誰かが、そういったような気もした。
「だから、今までのように二人で会ったりは、もう出来ないから」
「分かった」と僕は言って視線を落とした。もう二人の姿を見ることも出来なかった。
沈黙が流れる。
誰かが何かを言わなければならないのに、誰も何もいえない、そんな時間が過ぎた。
五分か、十分くらいか。そんな沈黙が続いた後、僕は席を立った。
「じゃあ」と僕は言った。二人は何も言わなかった。
外に出ると、もう雪はやんでいた。
あれからもう一ヶ月が経つのか、と歩きながら僕はそんなことを考えている。
遊園地までは、もう数百メートル。観覧車は、もうほとんど目の前だ。
昨日、サクラからメールが届いた。
長いメールだった。途中で切れると困るから、という理由でそのメールは五通にも分けられていた。
自分と隆二が付き合うことによって、
結果としてはあなたから友人を一人奪ってしまったことを申し訳なく思う、
とそんな内容のメールから始まり、
アタシ達は自首することにした、という内容でメールは終わっていた。
From サクラ
Sub(non title)
こんばんわ。
ジン、元気にしてる?
前はあんなに会ってたのに、最近全然会っていないから。
ごめんね、ごめんね。ジン君、ごめんね。
謝ってもしょうがないんだけど、なんか、アタシがジン君から隆二を奪ったみたいで。
本当に、ごめん。昔は楽しかったね。三人で、くだらない話とかしてさ、昔はよかったね。
たまにね、思うの。
隆二君と付き合えて、アタシは満足してるんだけど、それでもね、思うんだよ。