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冬の観覧車
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冬の観覧車 ◆第三話◆(最終話)◆-2

 失ったものにはもう手は届かないから。

 僕の想像の中の神様はウサギの形をしている。

 ルルララとおなじ、真っ白な毛に包まれた、神の名はHey Hey rabbit。



 彼らの裏切りは、僕の手の届かない場所に行ってしまったこと。

 隆二に呼び出された僕は、ファミレスの窓際の席に座ってコーヒーを飲んでいた。

窓の外は薄暗い。ひらひら、雪が舞い落ちている。

夕方のファミレスに人影はまばら。従業員も、なんだかのんびりと働いているように見えた。

僕の前には、ただ間を持たせるというためだけに存在しているホットコーヒーが、

ほとんど手付かずのまま残っていた。僕は窓の外の景色を、ただじっと眺めていた。

 やがて、隆二が薄手のコートのポケットに両手を突っ込んで、僕の席の前に立った。

窓にその様子が映っていた。その少し後ろに、サクラの姿も。

「待ったか?」と、隆二は言う。

「いや、そうでもない」僕は視線を隆二のほうを向ける。「座ったら?」

 ああ、と短く返事をして、隆二が僕と向かい合って座る。

サクラは、その隣に。二人もコーヒーを頼んだ。

 しばらく二人は黙っていた。だから、僕も何も喋らなかった。

僕らはまるで巨大な湖みたいだった。

波を立てることもなく、ただひっそりとそこにある、静かで透明な湖。

コーヒーが運ばれてきてからも、僕たちは黙っていた。

二人とも、コーヒーに砂糖とミルクを入れ、スプーンでかき混ぜた。

必要以上に念入りに二人はコーヒーをかき混ぜる。だが、結局はそれに口をつけることなく終わる。

スプーンが、コーヒー皿の上に置かれる。

「それで」僕は口を開く。「わざわざ話って、なんだ?」

 僕は不機嫌だった。

不自然な二人と、不自然な場所で、

おそらくは僕にとってあまりよくない話を聞かされるのだろうという予感。

いい気分はしない。

「ああ」隆二の視線が宙を舞う。僕は言葉を待つ。

隆二は、何を言うべきか、どう話すべきかを考えている。真剣な表情で。視線だけが、宙を舞う。

 やがて、サクラが口を開いた。


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