その鮮やかさに魅せられて-6
2人の間を車が過ぎ去る音が響く。
千歳は俯いたままハンドルにもたれかかった。
遊佐子はただ千歳を見つめた。
何か言葉を発すると2人の今までの関係が壊れる予感がした。
何事もなかったように振舞えるほど大人になりきれない2人は言葉を発する事が出来ないままそこにいる。
「・・・・瀬戸内さん・・・・。家、ダイジョブ??」
沈黙に耐えかねた千歳が呻くように言う。
遊佐子は短く感情を込めず、大丈夫と答えた。
沈黙が2人の間の距離を広げ、時折走り去る車のエンジン音がその距離をより広げていった。
「・・・・・オレ、瀬戸内さんのコト、好きっつーか・・・・・・。そーゆー目で見てます」
不意打ちのような台詞を千歳は搾り出す。
遊佐子は唾を飲み込み、髪をしきりに掻きあげた。
欲しかった言葉が目の前にぶら下っているが、手を伸ばせば消えてしまいそうなほど脆い言葉だ。
遊佐子は千歳を見ることが出来ない。
「・・・てゆっか、ジョーダンでしょ・・・・・・」
遊佐子のこの場から逃げ出したい気持ちが言葉として現れた。
千歳は車のエンジンを切り、シートにもたれ、泣き出しそうな瞳で遊佐子を捕える。
その瞳が遊佐子には熱く逃れられない罠のように感じられ、恐ろしかった。
千歳は俯いたままの遊佐子を見つめ言葉を紡いでいく。
「別に、どーこーしたいとかそうゆーんじゃなくて、ただバカ話してるだけでいいんデス。迷惑掛けるようなコト、基本的にしたくないデスし・・・・・・。こーゆーことをオレが言ってもアレだけど・・・・・。今までどおりにフツーに話とかして、研究室で飲みとか行ったりね・・・・・。そんな感じでイイんデス。・・・・マジ、そんだけでイイんデス・・・・」
千歳は途切れ途切れになる言葉を必死で繋ぎ合わせ、遊佐子に気持ちを伝える。
そんな千歳が恐ろしいほど遊佐子は愛しく思えた。
だから遊佐子はそっと千歳の頬に手を添えたのだ。
してはいけないことだろうが、今しなければならないような気がした。
だから今するのだ。
これは、今しなければならないことなのだ。
遊佐子はゆっくりと千歳の唇に自らの唇を合わせた。
千歳は遊佐子の動きに合わすように自らの身体を動かし、遊佐子の腰に腕を回した。
ゆっくりと互いの唇を吸い、舌を絡める。
遊佐子の手が千歳の頬から首筋をなで上げ、耳たぶを指でなぞっていった。
千歳は遊佐子の動きに答えるように腰から背中を撫で上げ、臀部の割れ目に指を這わせた。
やがて水音が響き、甘い溜息が漏れ始めた。