未完成恋愛シンドローム - 白昼夢 --5
「・・・・」
そのままパッパと着替えて道場を出る。
鍵を閉めていると不意に、人の気配を感じた。
「おはろー」
「・・珍しく早いな、コタロー」
遅刻常習犯のクセに、というのは口に出さないでおく。
「いや、チコクした」
「？」
真顔でいうコタローに、ついにボケたのかと一瞬思う。
「段蔵に相手してもらうつもりやってんけど、寝過ごした」
「・・・」
ボケたと言うか、元からか。
少し大袈裟に溜め息をついて、一緒に教室に向けて歩き出す。
毎週この日の朝の話題は、大体決まっている。
「今日はどうやった？」
「いつも通り。ボコボコ」
そういいながら少し制服を捲り、打たれた所を見せる。
「うわー、痛そー」
「これ多分、風呂入ったらしみる」
「今は？」
「じんじんする」
「段蔵さん、手加減ないからなー」
「んー・・」
―本当にそうなんだろうか？
「多分ほんまに本気やったら、今頃オレ死んでるわ」
「あー、まぁ確かに」
「・・・」
ボソッと呟いたオレの言葉に普通に反応された。
―コノヤロウ。
一瞬睨みつけ、そのまま尻を蹴り飛ばした。
「あ、つかコタロー」
「ん？」
２限が終わり15分の半休憩中。
移動教室だったオレ達のクラスは美術室へ。
「ちゃんと持って来た？」
「なにを？」
・・・。
「？」
沈痛な表情でコタローを見る。
「・・・今日持ってこいってゆーたやんか。ＤＶＤ」
「なんかあったっけ？・・あ。ＡＶ？」
「違う！」
誰と勘違いしてるんだ・・・。
「いや、こないだゆーしに借りた外人モンがなかなかモザイク薄ぐっ」
最後まで言わせずに蹴り飛ばす。
「ちゃうゆーてるやろ」
「短気やねんから」
「そーゆー問題ちゃうわ！」
―つか、エロビデオなんて見てなにが楽しいんだか・・・。
「借したろか？」
「いらん！」
言い放ち、そのままコタローを置いてつかつかと早足で廊下を進んでいく。
渡り廊下を中程まで進んだあと、後ろにふりむく。
全く急ぐ気のないコタローの姿。
―こいつは・・・。
溜め息をつき、少し待つ。
「いやー、愛されてるなー」
「・・は？」
また意味不明なことを言い出したコタローに、訝しげな視線を向ける。
「え？いやだって、愛しい愛しい親友の俺のこと、待っててくれたんやろ？」
「・・・。」
「いやー、俺ってイケメンやからなー。でも惚れたらあかんで？」
「・・・・・・。」
「俺のファンの女の子に嫉妬され」
「死ねーっっっっっ！！！！！」
「うぶっ」
―撃沈。
・・・・・。