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未完成恋愛シンドローム
【同性愛♂ 官能小説】

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未完成恋愛シンドローム - 白昼夢 --2

怖い、怖い、怖い。
涙が出て来た。
でも、見せたくない。
お腹を押さえ、顔を下に向け、ゆっくりと、立ち上がろうとする。
いきなり後ろから蹴り倒される。
そのまま、正面から転ぶ。
変な体勢で転んだせいか、耳の下あたりに熱い感覚が走る。
目の前に1人いるのに。そう思って後ろを覗き見る。もう1人、2人。
ニヤニヤしながら立っている。
殺される。
本気で思った。
もう母さんにも、カイトにも逢えない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
逃げなきゃ。
そう思って、立ち上がろうとする。
力が、入らない。
なにもされてないのに転んだ。
砂利の、味がした。

・・・・・・。

足音が聞こえる。
瞳を閉じたまま、その人を待つ。
―ガラッ
ドアが開く。
「おはよ」
「おはようございます、師匠」


―未完成恋愛シンドローム―

episode.2 ―白昼夢―


畳の上で向かい合って座っている。
もう一度瞳を閉じ、精神を研ぎ澄ませていく。
瞳を閉じていると、目の前に居るはずの人物は消え、薄ぼんやりとした空間をそこに感じるだけになる。
「伊吹」
「・・はい」
ゆっくりと瞳を開ける。
胴着を着た師匠の姿がそこにある。
「始めよか」
「はい」

いつからか週に一度、朝早くに体育館の地下にあるこの道場でこの人と手合わせをするのが習慣になっていた。
まだ高々10数年しか生きてないオレが評価を下すのもどうかとは思うけど、半端じゃなく強い。
それでもこの人は、昔より力は落ちたと笑う。
これからは、オレやカイトみたいな若いヤツに抜かれていくだけだと。

先に立ち上がり、正眼で構える。
後からゆっくりと立ち上がり、下段で構える師匠。
朝の、この時間だけは、自分の持っているどんな技術も遣って構わないことになっている。
「・・いきます」
「ん」
右足で踏み込み、左で正拳を繰り出す。
捌かれ、胴着の袖を掴まれる。
世界が廻る。
―ダンッ
「次」
「はいっ」
飛び起き、再び構える。
踏み込む。上段。蹴り。
受けられ、同時に襟を掴まれる。
軸足。再び身体が飛ぶ。


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