フニと僕の成長記-2
『い〜や〜!』
「ダ〜メ〜!」
玄関で爪を立てて抵抗するフニを無理矢理外に連れていきます。
フニは雨の日が大嫌いで雨の日はお散歩に行きたくないみたいでした。でも行かなきゃ行けないのです。
一旦外に出るとフニは尻尾と頭を下げてトボトボ歩きました。
そして家から出て数十メートルでフニは用を足し、ぐりんっとUターンしました。かなり強い力です。普段どこにこんな力があるんだろうと思うぐらいの力です。
家に到着して濡れたフニの体を拭こうとタオルを広げた時です。
「うわぁっ」
フニは僕の真ん前でブルブルしました。雨水が僕に飛んできます。
とりあえず体を拭きあげるとフニはリビングまで歩いていきました。顔についた水飛沫を手の甲で拭うと、リビングからフニが
『ざまみろっ』
と言うようにジッと眠そうな瞳で僕を見ていました。
ある日、僕は友達と遊んでいて、フニのお散歩をすっかり忘れていました。6時には帰ってくるようにと言われているのに、家に着いたのは7時を少し過ぎていました。
「あんた今何時だと思ってんの!?」
「ごめっ…ひっく…ごめんなさ…」
「もう真っ暗じゃないの!5時でも最近じゃ薄暗いってのに」
「ふっ…ごめ…」
お母さんは髪が逆立つんじゃないかと思うぐらい僕を叱りました。
「フニのお散歩にも行ってないし…って、フニは何でそんな顔してお母さん見てるの!」
隣を見るとさっきまで眠っていたフニが立っていて、お母さんに牙を向けていました。
『ウゥ〜…』
「お母さんに向かってウ〜じゃないでしょ」
お母さんは家で一番強いんです。なので、フニの牙に臆することなくフニの頭をコンと軽く小突きました。
まぁフニの牙は牙という程鋭くなく、人間の八重歯みたいで全然怖くないんですけど。
小突かれたフニは尻尾を垂らしてシュンとしました。
「全くもう!どれだけ心配したと思ってんの、約束も守れないの!?しかもお散歩っていう自分のしご…ぶふっ…ちょ…フニ、やめな、ンブ」
お母さんの様子が変です。見るとフニは後ろ足だけで立ち上がり、前足を座っているお母さんの肩に掛けて、お母さんの口をベロベロと舐めていました。
『さっきはごめんね〜。もうフニ、ウ〜しないからぁ。そんなにおこんないで〜』
フニは時々お母さんのほっぺにスリスリします。
それを見ていた僕は思わず吹き出してしまいました。お母さんもいつの間にか笑ってます。
「ぐすっ…お母さん、ごめんなさい」
「うん、分かったからもういい。早く部屋で宿題して来ちゃいなさい。その間にお母さんご飯作っちゃうから!」
僕は頷くとまだスリスリしているフニを抱えて二階の部屋へ行きました。