恋愛武勇伝 第二章 蠢動編-3
That’s Syougatsu!
やったね!
ナンパに成功だぁぁぁ。
けど これって、ナンパかぁ?
たゞ、住所を聞き出せただけじゃないかぁ。
midoriさん・・いい名前だ。
ピッタリだぜ、その容姿に。楚々とした風情だった、
連れの女は少しケバかったけど。
「止めなさいょ、midoriぃ!このひと、少しオカシイんじゃんないぃ・・」
お前は関係ないんだょぉ、口挟むなょなぁ。
「あなたをイメージして、詩を書き上げたんです、今。今度は、小説を書いてみたいんです。」
走り書きしたメモ用紙を見せて、彼女を納得させた。
「わたしも、詩を書いてるんです・・・」
嬉しい言葉だぜ。
それに、綺麗な声だったぁぁぁ。
俺の差し出したメモ用紙に、
midoriさんが住所を書き込んでくれた。
感激ぃぃ!
「知らないからねぇ、あたしぃ!」
呆れ顔で、連れの女が言う。
「大丈夫ぅ!詩を書く人に、悪い人はいないわ。それに、素敵ょ、この詩。わたし、好きょ。」
にこやかな笑顔が、ホント眩しかったぁ。
これは、マジで頑張らねば・・。
◇◇◇◇◇
弱ったよぉぉぉ・・、ちっともペンが走らないんだょお!
そもそも、どんな物にしていいか・・分かんないんだ。
単なる恋愛小説にはしたくないし・・・。
もうあれから、二週間が経とうとしているのに、タイトルすら決まらない。
弁解の手紙を書こうかとも思ったけど、それも変だしなぁ。
あぁ、何てこったぁ!
これじゃ、あの連れの女が
"やっぱり、よ!"って、言いかねないぞ。
いや、それより何より、midoriさんが何て思うことか・・。
はぁぁぁ、弱った。
The moon shines bright,but dark in my heart.
っ、てか?
そんな冗談を言ってる場合じゃないんだ。
ほかとにマズイぞ、これは。
気晴らしに出かけようかと思っても、今日は雨だし・・。
夜には、雪に変わるらしいし・・。
うん?
・・雨?
・・夕立ち
・・初恋
・・甘酸っぱい
・・そうか!
◇◇◇◇◇◇
『レモンの夕立ち』
これ、どうだ?
・・いいぞ!
初恋物語り
叶わぬ恋
midoriさんのイメージは、
そう!
少女だぜ。
無垢な少女
いいぞ、いいぞ
!
待て待て、
“叶わぬ恋”と言うのは、いただけない。
そうだ!
ロミオとジュリエットだょ。
周囲の反対で、中々に逢えない二人。
だめだ!
パクリはだめだ。
そうじゃなくて、うーん・・
うん!
出来たぞ!
高校生と小学六年生、これでどうだ。
田舎に住んでるmidoriさんだ、これを頂こう。
爺ちゃん婆ちゃんの居る、田舎。
そこに、夏休みに遊びに行く・・・。
遊び?
これじゃ、ちょっとなぁ。
いっそ、住んでたことにするかぁ。
中学時代まで住んでて、親の仕事の関係で町に移り住んだ。
で、それまでは、兄弟同様にしていた。
よちよち歩きの頃から、一緒に・・。
midoriさんの親はお百姓さんで、子守りを任されていた・・。
よし!これでいこう。
短編だな、これは。
やっぱ、夏休みに遊びに行ったことにしょう。
◇◇◇◇◇
・・・
もうあれから、一ヶ月だ。
そりゃあ、あの運命的な出逢いから、一ヶ月近く経っての・・・。
一気に書き上げたものの、何度か書き直して・・。
結局、midoriさんに贈ったのは、二月に入ってからだった。雪が降り続ける中を、大事に抱え込んで、〒局に持ち込んだのに。
折り目を付けたくなかったから、大き目の角封筒で出した・・。
切手代が・・・いや止めよう。
そんなお金の問題じゃないんだ。
うん?
・・・住所
・・書いたっけ?
差出人・・書いたっけ?
どうだったっけ?
うひよぉ!
忘れたかも・・
ひょっとして、家の人に、変な手紙だって、ポイ!されたかも・・