マッドな彼女with俺1-2
「えー?なになに??
だって2人とも付き合ってるんでしょー?」
「付き合ってる、か…。
まだ『飼われてる』のほうがニュアンス的には合ってると思うんだけど…」
はぁ〜…
本日二度の長い長いため息を吐く。
「まぁ、仕方ねぇんじゃない?
お前にはあれくらいが調度いいんだよ」
「よくねぇー!
アレはイジメ、いや一種の虐待だぞ!!」
「まぁまぁ、お前Mだし」
「そういう問題じゃねぇー!
てか俺どちらかというとSだし!!」
「駿八、どうしたの。
そんな大声出して」
と、その声を聞いた瞬間、俺たちは凍り付いた。
この透き通った綺麗な声…まさか…
「し、静谷!?」
「なに驚いてんのよ。
そんな馬鹿面してないで呼ばれたらさっさと来なさい」
えー…この絶世の美少女さんが俺の彼女、静谷香澄(しずや かすみ)。
『静谷が通れば振り返らない人はいない』という格言まで生まれた美貌の持ち主で、全国模試で1位をとる天才でありながらさらに運動能力はインターハイで優勝してしまうほどのパーフェクト人間である。
しかし、だ。
彼女を一言で言うのならば、美少女でも天才でもパーフェクト人間でもない。
そう、まさに『変人』。
この一言につきるのだ。
まぁ、確かに天才は馬鹿と紙一重なんて言うけれど、静谷の場合は『狂人』なのであろうか。
いや、それより『虐待魔』と言ったほうが…でもそれならいっその事『悪魔』のほうが近いのか………と、とにかく普通の人間ではないということだ。
そして、本当に、本当に些細なことで静谷とカレカノ関係になったのはつい一週間くらい前のことで、それからというもの思い出すのもおぞましい出来事の数々があったわけで…
「ちょっと駿八!
早く来なさいって言ってるでしょ!
たかが駿八ごときに貴重な時間を使わせないでよ!」
そう言って俺の腕を捕まえて連行していく静谷。
ヤバイ…このパターンは殺られるパターンだ!
「嫌だぁぁぁ!!俺はまだ死にたくないぃぃぃ!!助けて、稔!!蒼衣ちゃん!!!」
「蒼衣よ。君は何か見たかい?」
「いいえ。見ていない。私たちは何も見ていない」
貴様らぁ!!棒読みで会話してんじゃねぇ!!!
「いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁーー………」
こうして俺はまた今日も静谷の餌食になってゆくのであった。