キライ B-7
「私に…言ってん…の?」
「ここには俺とお前しかいねーだろ」
少し顔を赤くした大迫は私の額を指で弾いた。
「たっ!」
額の痛みと大迫の告白に涙が止まらない。
「いつも意地悪で…偉そうだしすぐ叩くし、いつか絶対泣かしてやるって思ってた。それなのに反対に泣かされてばっかで…」
「悪かったな…」
私の頭を優しく撫でる。
「キライでキライで…大迫だけは絶対好きにならないって思ってた」
「俺がキライ…か?」
頭の手が止まり哀しげな声が体育館に響く。
私は目の前にいる大迫に抱きついた。
「う…わっ!」
大迫が驚いた声を上げたけど私はかまわずしがみつく。
「篠田?」
「廉っ…!好きっ…」
「香奈」
廉は私の頬を両手で挟んで涙を拭ってくれた。
「気の強いとこも、人のいいとこも、ちんちくりんなとこも全部好きだよ」
「ちんちくりんは余計だよっ」
私は廉の背中をつねった。
「てーなー」
抗議する廉にすました声で言ってやる。
「今までのお返し」
「減らず口にはお仕置きだ」
前みたいにまた頬をつねられると思い、思わず目を閉じた。
唇に軽く何かが触れ、それが廉の唇だと思い至るまで数秒かかった。
「香奈…」
そっと私の名前を呟く。
私もそれに答えるように呟いた。
「廉…」
再び唇が重なった。
ついばむように繰り返されるキスに頭がぼぉっとしてくる。
一気に気持ちが緩み足の力が抜けてガクっと私は崩れ落ちた。
「香奈?!」
廉は慌てて私を支える。
「ごめ…っ。もう力入んない…」
小さく笑顔を作る私を廉が抱き上げた。