青空の下で-6
「えっ、な、なに!?」
「えっへへ、いやいやいや〜、これはいいものを撮れました」
目の前に姿を現したのは、全身を汗まみれにした山田であった。
「キャッ! や、山田さん、何してるんですか!?」
慌てて新しいスリムパンツを穿きながら、怒りに満ちた眼を山田に向ける。
「いやね、誰も相手してくれないから、バードウォッチングしようと一人で山ん中を詮索してたんですよ。そうしたら、たまたまここへ出ちゃって。いやー、驚きましたよ、奥さんがこんなとこで素っ裸になってるなんて。こりゃあ、堪らんと思ってすぐに撮らせてもらいました」
真理子の表情から血の気が引いた。
「と、撮ったって……もしかして、裸を撮ったんですか?」
「ええ、バッチリと」
ズリ下がったメガネを押し上げ、ニンマリと笑う山田。
真理子は愕然とした。
「ちょ、ちょっと冗談はヤメテください! いますぐ消してください!」
「嫌です」
「なっ……しゅ、主人にいいますよ!」
「どうぞ」
「えっ……!?」
どこまでもふてぶてしい山田の態度に、真理子は怒りを露わにその場から駆け出した。が、すぐに次の山田の言葉で足がとまった。
「送信済みですよ!」
「えっ!?」
「だから、撮った画像、僕のパソコンと会社のパソコンに送ったって言ったんです」
「な、……そんなこと」
「できるんです。これで」
山田は、小型のモバイルと薄いCFカードを見せた。
「あ、あの……おっしゃってる意味がわかりません」
「ここで奥さんが僕の言うことを聞かなかったら、会社のみんなを通じて奥さんの露出ぶりをネットに流してもらいます。まあようするに、僕を殺さない限りはどんなに旦那さんへ訴えてみても無駄ってことです」
青ざめていく真理子の美貌が、にわかに引き攣った。
「で、でも、こんなことをあなたの奥さんが知ったら……」
「奥さん、あんな奴と別れられるんだったら、そっちのほうが僕としてはありがたいんですよ。うししっ」
「そ、そんな馬鹿なこと……」
ただならぬ恐怖が込み上げてきた。
同時に、心の中で絶望に近い溜め息が漏れはじめた。
「奥さん、最初にいっとくが、僕に情などというものはいっさい通用しない。だから未練がましいことは言わないこと。それに、絶対に口答えしない。もし同じ言葉を二回繰り返したら、すぐに会社の連中に電話するからね。わかった」
「ひ、ひどい……」
「あらら、もう言いつけを破っちゃったよ。じゃあ、仕方ないね」
「ああ、ちょ、ちょっと待ってください、わかりました。絶対に口答えしません」
温情を微塵にも感じさせない山田の態度に、真理子はようやく自分の置かれている状況を把握した。