青空の下で-4
「それで、この時期に見れる野鳥の中でも、」
「あんた、それくらいでやめなよ。真理子さん困ってるだろ?」
鬼の一言で、山田は肩をすくめてぺロリと舌をだした。
「い、いや、楽しいですよ。色々詳しいんですね、ご主人。あっ、わたしビール取ってきますね」
真理子は助かったとばかりに躊躇なく席をたった。
子供達と一緒に水を浴びながら満面の笑みを浮かべる健太郎と中島。
真理子の眼に映っていたのは夫の健太郎ではなく、焼けた肌に真っ白な歯を清楚に輝かせている中島のほうだった。
(ああ、ほんとに素敵よね〜、中島さん。昔はケンちゃんのほうがカッコよかったんだけどなぁ……。あらら、弛んだお腹をあんなに露出しちゃって。それにひきかえ……)
いっさいの贅肉をつけていない中島の肉体が、燻っていた真理子の欲情を狂おしいほどに昂ぶらせていく。
不埒な妄想が、胸を苦しいくらいに締め付けた。
(ふぅ、もう昔のようにドキドキする恋なんて無理よね。わたしには夫も子供も裏切れない。それに、中島さんにはあんなに素敵な奥さんがいらっしゃるもの)
自身の欲望に歯止めをかけていく。
母親としての人生をまっとうしようと、新たな決意を胸に秘めた瞬間、中島の遠くを見るような目差しが真理子の心を射抜いてきた。
(あっ、中島さんがこっちを見てる……!?)
ビクッと肩を震わせ、おもわず視線を外す。
胸が激しく高鳴った。
真理子は、戸惑った様子でキョロキョロと辺りを見まわすと、足首まで水の中につかってビールのおいてある場所へと急いだ。
「きゃあっ!」
バッシャーン!
慎重さを欠いた真理子は、川底の石につまずき勢いよくその場へ尻餅をついた。
「キャハハ、ママ、何やってんだよ」
「わーい、シンちゃんのママがズッコケたぁ!」
「おいおい、気をつけろよ!」
爆笑する子供と健太郎をよそに、中島が心配そうな顔をしながらすぐに駈け寄ってきた。
真理子の表情は、痴態を晒した恥ずかしさ以上に、手を差し伸べてきた中島に対して顔を真っ赤にさせた。
「だ、大丈夫ですか、奥さん? 怪我はないですか?」
「え、ええ、大丈夫です。すみません、慣れないアルコールに、ちょっぴり酔ってしまったみたいで……」
差し伸べられた逞しい手をそっと握る真理子。
また、真理子の手をギュウッと強く握り締める中島。
掌に感じる中島の体温が、昂ぶりはじめていた肉体をズキズキと疼かせていく。
(あ、あぁ……なんだか身体がぞくぞくしちゃう……)
潤んだ瞳をジッと見つめる中島もまた、どうしようもない激情に見舞われていた。
「お、奥さん、着替えはあるんですか?」
「あっ、は、はい。もしかしたら泳ぐかもしれないって夫が言っていましたから……」
立ち上がった真理子の下半身に、中島はおもわず言葉をなくした。