青空の下で-2
学生時代に新体操で鍛えた肉体には少し脂肪がつきはじめていたが、ある男友達からは『若い娘にはない大人の色気がついてきた』と言われていた。
まんざらでもない。
Cカップだったバストも、二人の子供を産んでからというもの急激に大きくなり、いまではEカップ、いや、もしかするとそれ以上はあるのかもしれない。
それがまた、胸元の膨らみを何ともエッチで悩ましい感じにしていた。
(そういえば、最後に夫とセックスしたのはいつだったかな……)
鏡を見ながら、真理子はふっと思った。
もう一年以上は経っているだろうか。
大きな垂れ目の瞳が、ほんのわずかに哀感を浮かべた。
トキメキを感じるには、おそらく夫の健太郎ではもう無理だろう。
相手に対して、お互いあまりにも羞恥心を失くしすぎている。
真理子にとっての健太郎はすでに恋人ではなく、子供たちのよき父親でしかなかった。
庭先でけたたましく鳴る車のクラクション。
子供達が、目をキラキラさせながら歓声と共に外へ飛び出していく。
「おお、シンちゃんにコウちゃん! あいかわらず元気がいいなぁ。パパとママは?」
駆け寄ってきた子供らに、中島が窓からひょっこりと顔を出して微笑みかけた。
キリッとした眉に精悍な顔つき。
若い頃にモデルの仕事をしていただけあって、その容姿からはセンスの良さがありありと伺える。
「こらこら、あんまり中島さんを困らせたらダメでしょ!」
「あっ、健太郎に奥さん、おはよう!」
中島は、マイカーに向かう健太郎と軽く言葉を交わしながら、玄関の戸締りをしている真理子の後姿をジッと見つめた。
スラリと伸びた長い脚に、白のスリムパンツがよく似合っている。
しなやかで、それでいて筋肉質なふくらはぎ……それが半分ほど露出し、何とも悩ましい。
ムチッとした太ももの上では、形良く釣り上がっているヒップが肉感的に膨らみ、思わず溜息を漏らしてしまうほどのエロさがそこにはあった。
(うーん、奥さんの尻……何度見ても堪んないなぁ……)
うっすらと浮き立つ細いパンティラインが、中島の欲情をさらに煽り立てていく。
そんな淫靡な妄想にふける中島の前に、一台の四駆がキキーッと耳障りなブレーキ音を立てながら停車してきた。
「悪い、遅くなっちゃった!」
豊満な妻の後ろから、これまた豊満な山田がズリ下がったメガネをクイッと人差し指でかけ直しながら声をかけてくる。
四駆のバックシートに乗っていた4人の子供達も、一斉に中島のほうへ顔を向けてきた。
みな同じような体型に同じような顔、中島はおもわず苦笑いを浮かべた。
「中島さん、お久しぶり。あいかわらずハンサムね〜。むふ、奥さんが羨ましいわ〜」
山田の奥さんが大きな顔をニンマリと歪めながら微笑みかける。
「あ、ああ、山田の奥さん、ほんと久しぶりですね〜、お元気でしたか?」
中島が、顔を引き攣らせながらニコッと笑って言葉を返す。っと、よくしゃべる山田の妻に、後部座席でおとなしくしていた愛娘が突然身を乗り出して叫んできた。