キライA-1
「今日もバスケ見に来いよ」
「はぁ?何で」
「昨日の今日で一緒にいなかったら不審がられるだろ」
それなら余計な事しなきゃいいじゃない!
ホントいい迷惑。
「わかった」
私は短く答えると大迫のそばを離れた。
私達を遠巻きに見てる人はイチャイチャして!みたいに思うだろうけど会話の中身は素っ気ない。
放課後、真っ直ぐ体育館に向かおうとした私をとおせんぼするように立ちはだかる女の子がいた。
どうやら同じ学年らしい。
上靴のラインが同じ色だ。
黙ってその子を見つめていると向こうから口を開いた。
「私、あなたが大迫くんのカノジョなんて認めてないから」
そりゃ、カノジョのふりだから別に認めてもらわなくていいんだけど。
彼女の上から発言に、生来の勝ち気さが頭をもたげて、つい言ってしまった。
「あなたが誰だか知らないけど、廉が選んだのは私だから。別にあなたの許可は必要ないよ」
その子は悔しさからだろうか唇を噛んだ。
「私の方がずっと大迫くんを好きなんだから」
絞りだすように唇から洩れた言葉。
うん、私よりあなたの方が大迫を想ってるよね。
でも言う相手を間違えてるよ。
それは私じゃなく大迫に言うべき言葉。
「そう廉に言ってみれば」
私はその子の横を擦り抜けて体育館に向かった。
体育館に着くと、昨日よりは少ないけどまだ女の子のギャラリーはいた。
私を見るとみんな一斉に敵意に満ちた目を向ける。
なるほど。
これじゃ大迫も気の毒かもね。
私は大迫が嫌いだし、カノジョのふりだからどんなに敵視されても、不愉快だけど心は大して痛まない。
もし私が大迫を好きだったなら、こんな目を向けられると居たたまれないだろなぁ。
一つため息をついてギャラリーから離れた場所で部活を眺める。
遅れてきたマネージャーらしき女の子が慌てて体育館に入ってきた。