ルーツ first-2
笑い声の弾ける中で 彼は浴衣から素足を私の布団に滑り込ませてきた。
知らん顔してゲームをしながら、足を私の足と絡ませる。
私は平然とした余裕の彼が憎らしく思って
彼の足を伝い、そっと付け根に手を伸ばした。
付け根のあたりでじらす。
私は何の経験も乏しい処女に過ぎないけれど、意識の「女」は
高慢にも主張を抑えない。
肉体に対する恐れと感情のギャップがさらに私の不安定さを誇示する。
チラっと盗み見る彼の表情は冷静だ。
雑談を交わし、笑っている。
ゲームのメンバーに気づかれまいと彼なりに芝居がかっているのか
それとも 本当にぜんぜん平気なのか。
私はさらに彼を困らせたくて、憎らしくて、手を伸ばした。
いささか彼のほうが腰を軽く持ち上げて、私の手を誘い入れたのかもしれない。
私は 彼の下着の中に手を差し込んだ。
彼のそこのモノは大きくなっていた。硬くなっていた。
ほら、やっぱり興奮しているんじゃない・・・。
私の中で安堵と充実感が熱を帯びて広がった。
彼の足も私の手の動きに答えるように
いや、もっと助長するかのように私の足の間に責めかかる。
並んだ布団が妙に上下するのをゲームの彼らはどう見ていたのか。
知らん顔を装って、彼はゲームを続けていた。
やがて、お開きとなり各自女子は女子の部屋へと引き下がった。
もちろん、私も。
何事もなかったかのように、初対面のイタズラな一夜は過ぎた。
彼から個人的な誘いがくるのに そう時間はかからなかった。
ためらいなく誘い出す彼。
戸惑うことなく約束を受けた。
食事でもなくお茶でもなく まっすぐに向かったのはホテル街。
新入社員の大胆さを彼はどう感じていたのだろう。
私が初めてだと思わなかったのか、いやたぶん、わかっていて
私が彼にただ、恋心を抱いたのだと思っていたのかもしれない。
初めての人に選ばれた。それくらいの思いだろうか。
もちろん、恋といえば恋だった。
条件だけで選べるほど冷めていない。
結果の反応が恐くない程度に 好きな人 であって欲しかった。
初めて行ったホテルは 狭くて寒くて古かった。
しばらくはコートも服も脱げないほど冷えていた。
彼に抱き寄せられるまま、口づけを受けた。
大人のキス・・経験済みだ
大好きな人に無理矢理された、あのキスとなんら変わらない。
緊張はあったけど、高ぶりも高揚もなかった。
彼は貪るように楽しんだのかもしれない。
だけど私は ただ受け入れた。それだけだった。
彼はたぶんいつもの段取りで、胸を触りつつ服を脱がせようとする。
覚悟は決めていたはずなのに、その段階にくると、どうしても許せなかった。
頑強な貞操帯でもはいているかのように
私はストッキングすら脱げないでいた。
彼としても、乱暴に求める気はないらしい。
一度限りでなく、次の機会もある。
私がやはり処女であることを確信して、焦るつもりはなかったのだろう。
やがて大好きだった人と同じように
私が開かないことに諦めた彼は、自分が全裸になった。
そして私を招く・・・あの時のように。
それをすることは経験があった。
だけど、あの時一度だけのこと。