螺旋の邂逅 vol.4-1
〜エピローグ
土曜日
「未来、私ちょっと出掛けてくるから。」
と、私は部屋のベットに寄り掛かり雑誌を読んでいた妹に言った。
「お昼は?」
雑誌から顔を上げずに聞かれる。
「いらない」
と、即答すれば
「行ってらっしゃい。」
と、即答された。
苦笑しつつも家を出て今日の目的の場所へ向かった。
普段使わない××線の方の最寄り駅から電車に乗り、2駅目で降りた。
オープンキャンパスの参加者は予想以上に多いようで道を聞かなくても、前の人に付いていけば着きそうなくらいだった。
駅から徒歩10分とあったのに、5分くらい歩くと何百メートルも続く煉瓦づくりの壁があらわれた。
ーこの向こう側が大学かな…?ー
と、思いながら、歩き続けると、ようやく門に辿り着いた。
門の先を見ればまだ壁が続いている。そんな壁伝いに小さな喫茶店の看板が見えた。
時計を見れば11:30すぎ…。私は引き寄せられるようにその喫茶店へと向かった。
喫茶店へと向かって歩いている途中、反対側からスーツ姿の女性達が歩いてきた。
おそらくはオープンキャンパスの手伝いをしている学生だろう。
「夏休み、スペイン行かない?」「ゴメン、オーストラリア短期留学行くんだ。」
そんな会話が聞こえてきた。私は彼女達と擦れ違った時、ラティの現在の性別も国籍も分からないことを再び思い出した。
ー…考えたくないな。見つからなかったらまたあの時みたいに過ごすのかな…。ー
複雑な思いを抱きながら、大学の隣の喫茶店"LEAF"に着いた。
"カランカラン"
「いらっしゃいませー」「いらっしゃいませ」
と、乾いた音に反応し、店員の人たちが口々に言った。
しかし、扉を開けてすぐ、私の目の前のテーブルに座っていた男性の横顔を見た瞬間、頭が真っ白になり、そして、無意識のうちに私の瞳からは大粒の涙が零れていた。
…そして、私は一言、
「・・・・ラティ・・」
と、呟いた。
螺旋の邂逅 完