夫婦の賭-1
『ねぇ、あなた。おいしい?』
「あぁ。」
『今日はちょっと違う味付けにしてみたの。』
「あぁ。」
『・・・あなたの口に合うといいんだけど。』
「あぁ。」
それが男の最期の言葉となった。
妻は夫の食事に毒を仕込んでいたのだ。
『…あなたが悪いんだからね。いつも私の作った料理なんか見ないで、テレビばっかり見て、美味しいって言ってくれたことなんてない…。』
しかし、女は信じていた。
最後にはきっと男が自分の料理を見てくれると。
そして、それと分かるよう仕込んだ毒に気付いてくれると。
しかし、男は死んだ。
それが2人の夫婦生活の答えだった。
夫の死体を見つめる女の目には涙が浮かんでいた。