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淫蕩淫魔ト呪持
【ファンタジー 官能小説】

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淫蕩淫魔ト呪持-13

「こいつでてめえの心臓をぶっ刺してやる」
「やれやれ――」
地面を背に、悪魔は降参とでもいうように両手を顔の高さまで上げてみせた。
しかし、その手はズッカの両の頬に伸び――
「そうしたら、お別れのキスだ」
悪魔の唇がズッカのそれと重なった。
「うげッ!?」
「ああッ! 何すんの!」
思わず口を押さえ、素っ頓狂な声を上げるズッカ。
キルシェもまた悪魔のキスに声を上げる。
ズッカの混乱の隙に抜け出た悪魔は、そんなキルシェの目の前に降り立った。
「!」
「何だかんだ言って、結構楽しめたよ」
「……ズッカもあたしも、殺すの」
「殺しはしないよ。殺したらそれまでだ。それじゃ、つまらないだろう」
いつだって殺せるのだから。そんな言い方だった。
「僕の目的はね、この世を混沌に陥れること。僕が楽しめる世界を創るのさ」
悪魔はくすくすと笑いながら続けた。
「君たちみたいな、いつでも遊べる"玩具"があると便利だろう?」
「僕はこれから西へ行く。彼が無事なら追っておいでよ。また一緒に遊んであげる」
再び優しげな微笑みと共にそう言って、彼女へと息を吹きかける。
「さあ、お喋りはこれまでにしよう。じゃあね、後はどうぞ――」
不気味なまでに純粋な笑みを浮かべ、うやうやしく悪魔は顔を下げた。
「どうぞ"ごゆっくり"」
意味深な言葉を吐き、悪魔は闇の中に姿を消した。

結局ズッカを殺さずに去った悪魔。
一体何が目的なのか。
「何なの、あの悪魔……」
彼の消えた闇を見つめ、キルシェは眉根を寄せた。
悪魔の息で自由の身となったキルシェは、そこではっとする。
「ズッカ!」
悪魔のキスを受けた彼はどうしたのだろう。
間違いなく、キスは呪だろう。
となれば、一体どんな呪が彼にかけられたのか。
「呪は――?」
キルシェがズッカに問うがしかし、彼女の問いは彼の異様な様子によって遮られた。
見た目には、どこも変化はしていない。
身体も顔も、昨日のズッカと何ら変わりはない。
おかしいのは彼の様子である。
顔を顰め、苦しげに荒い息を吐いている。
体内に毒を受けたとでもいうのだろうか。
「ズ……」
彼女の言葉は再度塞がれた。今度は、彼の手によって。
ズッカは荒い息を吐いたまま、キルシェの首根っこを掴んでいた。
しかし、殺すには力が弱い。
「はあッ……はあッ……」
ズッカは首根っこを掴んだまま、彼女の身体を樹に押し付けた。
彼の額に汗が滲む。
「ん……ッ」
唐突に、ズッカがキルシェの唇を奪った。
噛み付くような荒々しいキス。
ざらついた舌を絡ませ、音を立てながら、ズッカは彼女の唇を貪った。


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