冬の観覧車 第二話-5
「手分けして探そう」無事に潜入できたことに安心しながら僕は言う。
「うむ」
「隊長はそっちを探してください」
「了解。ジンチーフはそちらを」
「御意」
そんな感じに役割分担を決めると、僕らは思い思いにタンスを開け、
押入れを開け、冷蔵庫の中にあったヤクルトを飲み(証拠隠滅のため、容器はちゃんとポケットに入れる)、
冷静さを取り戻した僕は、優雅に小奇麗なトイレで小便をする。
「兄貴、そちらはどうです?」と隆二。
「リーダー、ロレックスがありました。どうぞ」
「こちらには高級そうなジッポライターが」
「ふむ。ここに金はないようだ」僕は階段を指差す。「リーダー、次は二階へ」
「了解」
僕らは高いテンションのまま二階へ向かった。
二階に部屋は四つあり、その一つは子供部屋らしかった。
広い部屋で、ピアノが置いてある。
ピンク色の家具で統一されていて、窓際にはぬいぐるみがならんでいた。
「ここには、さすがにないな。どう見ても子供部屋だし」というわけで、残りは三部屋。
うち一つは寝室で、こちらも除外。残るはリビングと、衣裳部屋だった。
リビングへ足を踏み入れると、僕は不意に視線を感じ、立ち止まる。
誰かに見られているという感覚があった。汗が額ににじむ。
だが、窓枠に目を向け、僕は安堵する。視線の主は、猫だった。
毛並みのいい、利口そうな猫だ。安心した僕らは、再び部屋を荒らし始める。
眠りを妨げられた猫は不機嫌そうにどこかへ行ってしまった。
十分後、何も見つけられなかった隆二が突然キレた。
ルブ・アル・ハリ、と呟きながら、部屋にあった電灯のついたスタンドを振り回し始めたのだった。
長い付き合いながら、隆二がキレたことはこれまでに三度しか見たことがない。