StealthA-14
「どうすんだ!?」
「こいつを腰に着けろ」
それは、レンジャー部隊が使う昇降ベルトだった。
恭一はベルトについたリールからロープを伸ばし、柱に縛りつけた。
「これでどうすんだ!」
ベルトを着けた五島が声を荒げた。恭一は落ち着いた口調で答える。
「こっから飛び降りるんだ」
「そんな!こんなの予定になかったぞ」
「仕方ないだろう。それに、リールは調整済みだ。1分あまりで下に着く」
2人は窓を乗り出すとビルの壁にぶら下がった。
「いいか、3、2、1、0で飛ぶぞ」
「分かった…」
「3…2…1…ゼロ!」
両手が離れた。落下するというよりも、早いスピードで降りてくといった感覚。
「イテッ!」
地上に着いた瞬間、五島は上手く対応できず、したたかに尻を打った。
恭一はベルトを素早く外すと、五島に駆け寄り、
「ロープを切るぞ!」
サバイバル・ナイフでロープを切り、五島を支えながらクルマへと向かった。
「ここだぞ!」
制服姿の屈強そうな男達が電算室に飛び込んできた。手にはそれぞれ警棒を握っている。
「なんだ!あれは」
彼らの目に、イスに縛られた今田の姿が飛び込んできた。警備員は今田を起こしロープをほどこうとすると、
「族は窓を破って逃げた!オレはいいから、奴らを追ってくれ」
警備員はひとりを残し、全員が電算室から出て行った。
「さっさと乗れ」
五島を助手席に押し込み恭一が運転席に乗ると、ビルの方から大勢の人間がこっちへ向かって来る。
「ヤバい!来るぞ」
恭一はズボンのポケットからクルマのキーを取り出すが、
「アッ!」
手が滑ってキーを床に落としてしまった。慌てて拾おうとするが、手探りで見つからない。
警備員達が迫る。その距離20メートル。
「何やってんだ!さっさと出せ」
「…それが…キーが…」
さらに迫り、距離は10メートルに。
「オイッ!」
その時、恭一の指にキーの感触が伝わった。素早く掴みあげるとキーを差し込みひねった。
エンジンが掛かる。ギアを入れてアクセルを一気に踏み込んだ。
警備員がクルマに飛び掛かる。が、一瞬早くルノー4は発進した。
「ふぃ〜〜っ、肝を潰したぜ」
「まったく、危機一髪だったな!」
2人は安堵の表情を浮かべ闇の中へと消えて行った。
…「Stealth」A完…