StealthA-13
「…こりゃ…すげえ…」
見つめる五島が感嘆の声をあげた。600m2はあろう部屋には、電気の変圧盤のような大きな金属製の箱が整然と並べられていた。
「コンピュータはこっちです」
それは空間の真ん中にポツンと、周りの機器に囲まれていた。
卓上のディスプレイとコンソール。そのあまりのみすぼらしさに、恭一と五島はにわかに信じられなかった。
「おい!この期におよんでオレ達を騙そうってんじゃないだろうな?」
「と、と、とんでもない!これが本物なんです」
「ヨシッ…」
五島はバックパックからノートパソコンを取り出すと、データ・コピーの準備を始めた。
恭一はそこにあったイスに今田を座らせ、ロープで縛りつけた。
「ちょっと!な、何を…」
うろたえる今田に、恭一は優しく諭す。
「いずれ警備員が気づいて踏み込んで来ます。あなたが私達と関係無いという“保険”ですよ」
「でも、これじゃアクセスコードが…」
「ああ…あれなら覚えましたよ」
「なんですって!?」
信じられないという顔の今田。
「信じられませんか?…E13β2ё55θ6…」
恭一はアクセスコードを空で言って聞かせた。今田の顔は驚愕に変わった。
「じゃあ、大人しくしてて下さい」
恭一は今田に背をむけ、五島の方へ向かった。
「どうだ?順調か」
「あと…ちょっとだ」
恭一は腕時計を見た。スタートから15分。ここまでは順調だ。
「ヨシッ、いいぞ」
恭一がコンソールを叩き、アクセスコードを入力する。
しかし、
「…なんだ?こりゃ」
ディスプレイには“アクセス不備”と表示されていた。
「そんな…」
恭一は再入力を試みたが、同じだった。
その時だ。ディスプレイが突然消え、警報が鳴り出した。
五島は引きちぎるようにケーブルを外すと、もの凄い勢いで今田を殴りつけた。
「テメェ!騙しやがって、ぶっ殺してやる!」
今田は勢いでイスごと床に叩きつけられた。
「ヒイィッ!し、知らない!そんなハズあるわけないんだ!」
泣き叫ぶ今田。なおも殴ろうとする五島を恭一が止めた。
「それよりも、あと数分で警備が来る。逃げるぞ」
五島は“クソッ!”と悪態をついてパソコンをバックパックに収める。
恭一は部屋の窓際に走ると、先の尖ったハンマーで窓ガラスを叩き割った。眼下に40メートル下の景色が見える。風がびゅうびゅうと部屋を鳴らした。