ポッキーとプリッツ-1
【○月×日午前0時、御社の1号倉庫のフ○リッツ全てを頂きに参ります――大怪盗S】
「これが犯行予告ですか。自称といい、今時古典的ですな」
新聞から適当に切り抜いて作られたであろう文字の羅列をしげしげと眺め、警部は渋面を作る。
「ええ。つい昨日、本社の私書箱に投げ入れられていました。
文面が正しければ、明日の日付が変わる頃です」
そう語るのは、某菓子メーカーの社長。
「しかし、不可解な点があるのです。
1号倉庫にあるのはホ○ッキーで、フ○リッツは隣町の2号倉庫なのです」
「商品名が明記されているということは、大方番号を間違えたのでしょうな。
大方いたずらでしょうが、何、警察に任せてください。
本日より2号倉庫を厳重に警備しましょう」
警部の号令一下、隣町には厳重な警備網が敷かれることとなった。
2号倉庫付近は警部が直々に出張り、少しでも怪しいものは社員でも厳重な取り調べを受けた。
蟻一匹通さぬ完全な警備体制である。
――そして、犯行予告当日。
「警部、2号倉庫異常ありません!」
「御苦労。やはり愉快犯の線だったか」
改めて警部が捜査体制を指示しようとした時、社長が慌てて駆け込んできた。
「た、大変です! 1号倉庫がやられました!」
「えっ!? しかし、1号倉庫にあるのはホ○ッキーだったのでは?」
警部の問いに、社長はがっくりとうなだれて答えた。
「チョコのかかってない部分だけ盗まれたんです」