未完成恋愛シンドローム - 片翼 --3
「・・脱げた」
さっきから心臓がバクバクいってる。なるべくカイトにそれが伝わらないように、平静を装って脱げたことを告げる。
「っていうか・・お前、近い」
「そう?緊張してるからちゃう?」
・・・。
心を読まれてる気すらしてきた。
普段なんでもないはずの言葉を発するということが、とんでもなく難しいことのようにすら思える。
「んじゃ、パンツも脱いで」
「う」
思わず素っ頓狂な声が上がる。
「でないとオナニー出来ひんで」
「・・」
このまま止めるって選択肢はないんだろうか?
流石に躊躇する。
「まぁでも、一応はパンツ履いてても出来んねんけどー」
先に言えよ。
「そっち教えて」
「パンツ汚れるで?」
・・・。
段々泣きたくなってきた。コイツ絶対に楽しんでる。
基本、いつもオレが洗濯含め家事をやっている。
が、たまに母さんも洗濯をしたりする。
今日の分の洗濯物は既に回して干した後だし、仮に(どんだけ汚れるかすら判んないけど)下着が汚れたからっていってパンツ一枚洗う為に洗濯機回して、仮にそん時に母さんが帰って来たら、流石に変に思うだろう。
下手におねしょしたとか勘違いされたら・・・。
「どーする?イヴ」
カイトが顔を覗き込んで聞いてくる。
「・・・脱ぐ」
というか、絶対判ってて聞いてる、コイツ。
カイトと目を合わさないようにしながら、トランクスのゴムに指をかける。
「・・見んな」
「えー」
「えー、ちゃうわ」
なにを見たがってんだコイツ・・。
「脱ぐ所見んかっても、脱いだ後に見んねんから。結局同じやで」
・・・。
確かに、と思った自分が腹立たしい。
「見ずに出来ひんの?」
見られずに出来るんなら、まだそっちの方がマシな気はする
「ムリ」
が、やっぱりそんな甘い希望が通る訳もなく。
「判った、脱ぐから。脱げばええんやろ脱げば」
誰がどう聞いてもヤケクソにしか聞こえないだろうが、取り敢えず意を決してトランクスを膝まで下ろす。そのまま全部脱いでも良かったんだけど・・・完全にカイトに主導権を握られてるのがなんとなくムカつくので、ワザと片足だけ脱ぎ、そのまま脚を投げ出した形になる。
「・・・で?」
少し不機嫌そうな声を出し、カイトの方を見る。
「・・・・」
何故かポカーンと口を開けたまま、オレと目が合うカイト。
「イヴ・・判っててやってる?」
「・・なにが?」
・・・。
なんか、よくよく考えてみればもの凄く恥ずかしい格好かもしれない。
「ま、えーけど」
気を取り直したのかこのままでいいと思ったのか、カイトが口を開く。
「つか、やっぱ遣ってないからかなー」
「は?」
「イヴ、ち○ちん剥いたことないっしょ?」
・・・。
意味が判らん・・・。
っていうか・・ち○ちん遣うって・・。
オレがトイレ行かないとか思ってんのかコイツ?
なんかバカにされた気がする。
「アホか、ちゃんといっつも使ってるわ」
「へえー。なんに遣ってんの?」
「しょんべんする時遣うに決まって・・・だからさっきっからなに笑ろてんねん」
なにが面白いのか、またもや突っ伏して笑うカイト。